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イャンダはどうするつもりなんだ?
-543 性格はなかなか治らない-
未だに緊張感が漂う店内、ただこのままでは話が進まないと思った店主は手土産で受け取ったロールケーキを食べようと小皿やお茶を取りに調理場へと戻った。
ピューア「どうしたの?いつになく静かじゃない。」
メラルーク「いやね・・・、変わったお客さんが来ているみたいなんだけど大丈夫だろう。ピューはゆっくりしていてね。」
娘に不信感を与えてはいけないと可能な限り気遣う父親、しかし本人自身もどうすれば良いのかが未だに分からない。
メラルーク「すみません、一先ず折角ですので頂いたケーキを食べましょうか。お茶のご用意もありますので良かったらご一緒に。」
イャンダ「すみません、恐れ入ります。」
緊張しているからか、すっかり流れに任せてしまっているイャンダ。ただここに来た本来の目的はケーキでは無い様な・・・。
それから数分の間、静寂の中で2人の咀嚼音だけが響いていた。正直言って長年生きて来たメラルークもこれ程緊張感と気まずさの両方を感じたのは初めてだっただろう。
ただ2人がケーキを食べ終わりかけた頃、調理場の奥から出て来たピューアが長く続いたその静寂を良い意味でぶち壊してくれた。
ピューア「お父さん?さっきから何も聞こえなくなっていたけどどうしたってのよ・・・、ってイャンじゃない!!」
メラルーク「えっ・・・?「イャン」?「イャンダ」・・・、そういう事か!!」
やっと気付いたか・・・、ちゃんと言わなかったイャンダも悪かったとはいえいくら何でも鈍感過ぎやしないか?
イャンダ「あ、はい・・・。ちゃんと自己紹介が出来ていなくてすみません、ピューアさんとお付き合いさせて頂いておりますイャンダ・コロニーと申します。」
目の前の男性の自己紹介を改めて聞いたメラルークは先程娘から聞いた言葉を思い出して少し疑い気味になっていた、まぁそうなっても仕方ないのかも知れないな。
メラルーク「えっと・・・、ご丁寧にどうもすみません。改めて自己紹介させて下さい、私はこの店の店主でピューアの父親のメラルークです。」
一先ず流れに任せてみる事に、今は刺激を与えすぎるのは良くないと考えたのだろう。
ピューア「2人してどうしたのよ、それに「初めまして」だったっけ?」
きっと男同士でしか分からない事だと思うが、やはり自分(娘)が付き合っている恋人(の父親)と会う時はどうしても緊張してしまう物だ(そう言えば守もそうだった様な)。
メラルーク「どうだったかな・・・、記憶があやふやでね・・・。」
ピューア「何それ、そんな事今まであった?」
イャンダ「お・・・、俺もなんです・・・。こちらこそすみません・・・。」
メラルーク「いえいえ・・・、お気になさらないで下さい。」
「一先ず話題を変えよう」と思ったメラルーク、ただどうして父親側が気を遣っているのかが理解できないピューア。
ピューア「お父さん・・・、堂々としていればいいのよ。何も言わず突然やって来たのはイャンダの方なんだから。」
メラルーク「仕方ないだろう、あまり話した事の無い人の前では緊張しちゃうんだよ。」
よくある「人見知り」って奴か・・・、ただ接客している時は「仕事だから」と割り切っているんだな。
ピューア「もう・・・、お父さんったら昔からそうなんだから。しっかりしてよね!!」
娘に背中を強く叩かれた父親は数回咳き込んだ後に再びお茶を啜った、やっと緊張が解れたんだろう。
メラルーク「そう言えば娘から「バルファイ王城で竜将軍だった」とお聞きしましたが・・・、何となくそう見え無いんですけどどうしてなんですかね?」
イャンダ「それは多分・・・、法律で戦闘行為が禁じられた事もあるんですがこの緊張しいのお陰で殆どの時間を厨房で過ごしていたからだと思います。」
メラルーク「あ・・・、そういう事ね。竜将軍の方も大変ですね(他人事)。」
興味持とうよ・・・




