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美麗はお店で売られているとは思えない大好きな料理を見かけて興奮していた。
-54 憧れの親子-
美麗はメニュー内の1品を見て震えていた、ただその表情は感動で嬉しそうに見えた。
美麗「何で?!何でこれがここにあるの?!」
好美「それは確か・・・、まだここが屋台だけだった時に・・・。」
すると、2人の会話に割り込んで来た女性が1人。
女性「私が売り始めたんだよ。」
美麗「その声は・・・、まさか!!」
美麗は声の方に振り向くと口を押えて涙を流し始めた。
美麗「赤姉さん!!」
声の正体は屋台の2号車を経営する赤江 渚、その人だった。
渚「その呼び方をするって事はあんた、美麗ちゃんだね。大きくなったね・・・、私も歳を取る訳だ。」
巷で「赤鬼」と呼ばれていた渚に憧れていた美麗は敬意を表してずっと「赤姉さん」と呼んでいた。
デルア「渚さん、屋台の方は良いのかい?」
渚「それがね、開店どころじゃないんだよ。オイルタンクに穴が開いちまったもんだから今スーさんの所で直してもらってんだよ、もう・・・、先月の売り上げがパーさね。」
デルア「どうせ渚さんの事だから、ガタガタの山道を無理矢理走ったんじゃないの?」
好美「そうですよ、2号車だけで何台買い換えたと思うんですか・・・。」
好美の言葉についタジタジになってしまう渚。
渚「えっと・・・、今ので確か・・・。」
指を折って台数を思い出そうとする渚、ただ大分サバを読んでいた様で・・・。
渚「えっと・・・、8台かな・・・。」
好美「17台です!!もう・・・、こっちの苦労も分かって下さい!!」
2人の様子を見ていたデルアが何処か楽しそうに見えたのは気の所為だろうか。
デルア「ハハハ・・・、そう言って実はあれじゃないの?ダンラルタ辺りによくいるバイク野郎たちと一緒に走ってたとか。」
渚「馬鹿だね、何失礼な事を言っているんだい。あんな奴らと一緒にしないでおくれ。エボⅢで走っていた訳じゃあるまいし。」
渚が副店長の言葉に焦りの表情をしていると、母の場所を『探知』した光が必死の形相で『瞬間移動』してきた。
光「お母さん!!やっぱりここにいた、もう・・・、何サボってんの!!「車が駄目になったから仕事が出来ない」って言ってたのお母さんでしょ?!店長が探してたよ!!」
渚「ごめんごめん、忘れてたよ。」
好美「光さん、どういう事ですか?」
光「理由はさっき言った通りなんだけどね、私が店長に頼み込んでレジ打ちの仕事をさせてあげてたのよ。いつまでも休憩から戻って来ないから店の中がパニックになってて。」
渚「分かったよ、戻るから許しておくれ・・・。」
光「本当だね?」
光は睨みを利かせながら母の頬を抓った、正直どちらが親なのか分からない。
美麗「光さんだよね?!今の光さんだよね?!」
好美「あんた・・・、興奮し過ぎでしょ。」
鼻息を荒げる友人に少し引き気味の好美、ただその傍らでデルアが痺れをきらしていた。
デルア「それで・・・、ご注文は?」
美麗「じゃあ・・・、炒飯と杏仁豆腐で。」
デルア「いや、「辛辛焼きそば」とちゃうんかい!!何処からどう考えてもその空気やったやろ!!」
何故か関西弁で突っ込むデルア、ただ美麗のボケ癖は学生時代から変わっていない様だ。
何処にいても美麗は美麗だ。