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メラはどんだけ食うねん
-541 気になっちゃうんだ-
未だに食事を終える事を知らない次女に呆れながらも休憩がてら長女の勉強を見守っていた父親はとある事を思い出した、下手すればこの「休憩」という時間をゆったりと過ごす為に最も大切な事だと言えるだろう。
メラルーク「あ・・・、表の札を「準備中」にするのを忘れてた。」
そう呟いたメラルークがふと壁に立てかけていた時計を見ると時刻は「15:30」を示していたので「まぁこんな時間帯に豚カツを食いに来る人なんてそうそういないだろうから大丈夫だろう」と気にしない様にしていた、しかし父親がボソッと呟いた独り言を娘は決して聞き逃さなかった。
ピューア「大丈夫なの?お客さん入って来ちゃうんじゃない?」
メラルーク「問題無いさ、もし入って来たとしてもデザートのアイスクリーム目当てだろうからお茶と一緒に出せば何も言われないって。」
ピューア「そんな物なの?」
つい先日まで昼夜逆転生活をしていたピューアには理解がしづらかったのかも知れないがモーニングやランチタイム、そしてディナータイム全てにおいて豚カツと一緒にアイスクリームを注文するお客さんが多い様だ。しかも「アイスクリームのみを食べに来た」という人達もちらほらいる様でそういった方々には店主が自らお茶を淹れて振舞っているという、どうやらメラルークが直接味見や交渉を行ってバラライ牧場から直接仕入れた牛乳を使っているが故に人気が出ている様だ(鳥獣人族すげぇ・・・)。
メラルーク「ところでピューは勉強を続けてなくて大丈夫なのか?」
ピューア「ちょっと息抜き、やっぱりどんな事でもずっと続けていると疲れて来るからね。」
確かにそうだ、バリバリ勉強するのは良いがずっと続けているとはかどる物もはかどらなくなってしまうので正直に言って効率が悪い。ピューアは調理場横の魔力保冷庫(冷蔵庫)へと向かって冷えた麦茶をグラスに注いで煽った、やはり魚人族にとって水分補給は最も重要となっている様だ(勿論俺達人間もね)。
ピューア「ああ・・・、美味しい。これもお父さんが拘って仕入れた物なの?」
メラルーク「いや、これはただの市販品だが。」
トンカツの材料を中心に色々な物を拘って仕入れてはいるが麦茶までは手が回らなかったらしい、しかし美味い物は美味いので問題はない。
そんな中でメラルークにはどうしても聞きたい事があった、勿論いずれ会うであろう「あの人」についてである。
メラルーク「ピュー、息抜きついでに聞かせてくれるか?」
ピューア「改まって何よ、今日何回目?」
こうやって改まった様に話をし始めるとやはり心臓に悪い気がしてくるのはきっと俺だけではない、その上ピューアにとっては今日だけで何度もあったのでよっぽどと言える。
メラルーク「さっき言ってた・・・、「イャン」さんだっけ?どんな人なんだ?」
父親としてはやはりいつか直接会う前に心構え位はしておきたい、娘目線でどの様な人物なのかを知っておくのも良い事だと思ったからだ。
ピューア「そうね・・・、バルファイ王城で竜将軍だった後に私が以前いた「暴徒の鱗 ビル下店」で店長して今度開店する新店でも店長する事になったんだって。」
するとピューアが何気なく言った言葉に食らいついたメラルーク。
メラルーク「ド・・・、竜将軍だって・・・?!」
ピューア「急に大声出さないでよ、心臓に悪いじゃない!!」
この日だけでどれだけ心臓に悪い刺激を与えて来たか、下手すれば心臓が何個あっても足らない事が始まってしまう。
メラルーク「凄い人じゃ無いか、料理の腕が相当だって事だぞ?!」
ピューア「そ・・・、そうなの(あのただのSM好きが)?」
バルファイ王城において竜将軍が食堂の厨房を任される事が何故か3国に渡って知れ渡り有名となっていた、同時に「王城で働いている人達を満足させるという事は相当な腕の持ち主だ」という話も。そんな話で親子が盛り上がっている中、店先から男性の声が・・・。
男性「す・・・、すみません・・・。」
ん?誰だ?まさか・・・、な・・・