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ガルナスがいたら終わってたな・・・
-540 拘りが故に-
相も変わらず大食い(いや食いしん坊か?)の妹にお代わりを渡した姉はやっと泣き止んだ父親の隣でノートを広げて学んだ事の復習をし始めた(いやまだ泣いとったんかい)、メラがゆっくりと食事を楽しんでいる事からも分かる様にやっと客足も落ち着いたみたいなのでメラルークは楽しそうにピューアの勉強を見ていた。きっと自分が研究に研究を重ねた味をこんなにも真面目に学んでくれている事が嬉しかったのか、それとも破竹の勢いで成長を続ける「暴徒の鱗」の新店で副店長を務める事になっている娘の事が誇らしかったのだろう。
娘の為にお茶を淹れてそっと置いた父親は自分も一時の休息を楽しんでいた、因みに先程までは「クソ」が着くほどに忙しかったのだが今は皿洗いをしておけば大丈夫なのでアルバイトに任せてある。
ピューア「ねぇ、1つ聞いても良いかな。」
疲労が蓄積していたのか、何となくゆっくりとしたこの時間を終わらせたくないという気持ちでいっぱいだったのでピューアの言葉が耳に入っていなかったメラルーク。改まった様に目を閉じてお茶を啜る・・・、と?
ピューア「お父さん!!聞いてる?!」
メラルーク「あっちぃ!!な・・・、何かな・・・?」
予想はしていたが持っていたお茶を勢いよく溢してしまったマーマン、大惨事にならないと良いのだが・・・。
ピューア「大丈夫?後にしようか?」
メラルーク「いや・・・、大丈夫だよ。それよりどうかしたかな?」
下手しなくても人間すら火傷を負いかねない温度だったというのに平気だという父親、やはり普段から熱々に熱された油を扱っているからが故だろうか。
ピューア「この前教えて貰った生姜焼きについてなんだけど。」
メラルーク「ああ・・・、ピューが同僚の女の子に作ってあげたいって言ってたやつね。」
ピューア「そうそう、だからちゃんとお父さんの味を受け継いでおかないとと思って。」
守の作った生姜焼きが大好物である好美に父親の味を味わって貰いたいと思っていたピューア、その上「生姜焼き」は新店におけるメインの商品にしようかという案も出ている。これはやはり責任重大となるのでしっかりと学んでおきたい。
メラルーク「いや・・・、隠し味まで教えたんだぞ?それなのにまだ不服なのか?」
「お客さんや娘たちがご飯を沢山食べれる様に」と隠し味としてこっそり入れている「擦りおろし大蒜」まで教えたというのに今度は何を聞こうとしているのだろうか、少し頭痛がしてきた様な・・・(正直気の所為であって欲しい)。
ピューア「違うの、私が聞きたかったのは「トマト」に関してなのよ。」
メラルークは生姜焼きのタレに少し酸味を加える為に一から崩したトマトを入れているという、それに関して聞きたい事があった様だ。
ピューア「実演してくれていた時に思ったんだけどトマトを崩すのって結構手間と時間が掛かっていたじゃない?これってケチャップじゃ駄目なの?」
甘みと酸味のみを加えたいのならケチャップで十分だが、店主なりの拘りがある様で。
メラルーク「いや、やはり新鮮で丸々としたトマトを使って瑞々しさを加えたかったから譲れないよ。」
サラダにする訳ではあるまいし、瑞々しさなど必要なのだろうか(まぁそこが拘りの1つだからぶつくさ言うのはやめておこうか)。
ピューア「サラダにしないのに瑞々しさなんて必要なの?」
聞いちゃったよ・・・、余計な質問だったんじゃないの?
メラルーク「うん・・・、そう思われても仕方ないけどやっぱりただでさえ脂っこくてむつこく感じてしまうお客さんもいるからね。サッパリさせた方が食べやすいと思ったんだ。」
ピューア「成程ね・・・、確かにお父さんの生姜焼きって食べやすかったかも。その証拠にほらあそこ・・・。」
メラ「お父さん、お姉ちゃん、生姜焼きとご飯のお代わり頂戴!!」
ピューア「あんた食べ過ぎ、もう5皿目じゃない!!ご飯も1升食べちゃってるのよ?!」
雰囲気ぶち壊し