532
また大事な事を酒の席で話す気か?
-532 何処か懐かしい穴場-
遠慮しがちな掘削場のリーダーと貝塚財閥代表取締役社長を背に乗せた国王はゴブリン・キングの案内で本人の自宅近くの酒場にやって来た、そこはまだ昼間だというのに冷蔵ケースから各々の好きな酒を取り出して各々で楽しんでいるお客さん達で賑わっていた(※因みにお会計はすぐ傍にいる女将さんに現金を直接渡すという形を取っていた)。
その光景を見た結愛は日本にいた頃の微かな記憶を辿って懐かしんでいた、それと同時に何となく興奮している様なそうでも無い様な表情をしていた。
結愛(回想)「これってもしかして「角打ち」か?!この世界に角打ちがあるのか?!」
驚愕の余り「大人モード」をすっかり忘れてしまっているネクロマンサー、これに関しては嫌な予感がしてならない。
ブロキント(回想)「雰囲気が良さげでしょ、あちらにいる女将さんが「お客さん同士が気兼ねなく互いを労える場所にして欲しい」って開いたんですよ。お陰ですっかりわいらゴブリン達にとっての憩いの穴場ですわ。」
デカルト(回想)「言われてみればちょこちょこですがゴブリン語が聞こえなくも無いですね、ゴブリンさん達ばかりなのでここでは共通語も必要無いかも知れませんね。」
周囲を見回してみるとそこではゴブリン達が上級・下級関係無く酒を酌み交わしていた(※結愛は『自動翻訳』によりゴブリン語も共通語(人間語)も関係なく日本語で聞こえているみたいだがデカルトはその限りでは無い)。そんな中、ブロキントが手差しした先で何故か怪訝な表情を浮かべていた女将さんが3人の下へと近づいて共通語で声をかけた。
女将「ブロちゃんじゃないか、あんた今日こそちゃんと持って来たんだろうね?!」
これも何となく見覚えのある光景な様な・・・、気の所為なら良いけど。
ブロキント(回想)「女将はん、何の事でっか?!わい、何かやらかしましたかね?!」
飽くまで知らんぷりを貫くゴブリン・キング、これに関しても「嘘だろ・・・」と言わせて欲しい。
女将「惚けるんじゃないよ、あんたどんだけツケが溜まっていると思っているんだい!!」
やっぱり・・・。
ブロキント(回想)「ちゃんと給料が出たら返すって言ってますやんか、毎月給料日に払いに来とるでしょう?!」
女将曰く、同じ掘削場で働くゴブリン達に酔った勢いで「日頃のお礼」と称して酒や肴を奢りまくっているらしい。それが積もりに積もった「ツケ」が結構な高額になっているとの事(毎月ちゃんと返しているなら良いじゃ無いか)、よく言う「塵も積もれば山となる」とはこういう事なのだろう。
ブロキント(回想)「それに今日は新しいお客さんを連れて来たさかい、許して下さいよ。」
女将「あらま本当、この辺りでは見ない方々だねぇ。」
どうやらこの女将さんもお客さん達と一緒に楽しくお酒を酌み交わしているうちに酔いが回ってきている様だ(仕事中だよな?)、すぐ横で缶ビールを呑んでいたお客さんが言うには「ここでは日常茶飯事だから許容範囲になっている」そうだ。
女将「お客さんはここ初めてかい?システムは分かるかい?」
結愛は元の世界(日本)にいた頃、光明とちょこちょこ角打ちの酒場へと行く事があったのでシステム自体は大体わかるみたいだが「郷に入っては郷に従え」という言葉を決して忘れてはいけない。
結愛(回想)「そこに並んでいる魔力保冷庫(冷蔵ケース)からお酒などを取り出して料金を女将さんにお渡しすれば良いんですよね?」
女将「そうだよ、おつまみはあそこに駄菓子があるからそれを選んでおくれ。料金は酒と同じで私に渡してくれりゃ大丈夫だよ、簡単な物で良かったら料理も出しているから注文してくれ。」
店のシステムに感銘を受けたデカルトは国王が故に出来る(?)ワイルドな注文を行う事に、よした方が良いと思うのだが・・・(御忍びでの格好なので気付かれていない)。
デカルト(回想)「では・・・、この魔力保冷庫に入っている酒を全部下さい!!」
女将「あんた、何処の誰だか知らないけど酒は1回の購入につき1本ずつだ!!」
あらら・・・