514
渚って分からん人だな・・・
-514 強い意志-
光でなくとも「自業自得だろ」と言いたくなった理由で腰を痛めた渚は誰が何と言おうと兄弟を雇う意志を曲げようとしなかった、もしかしたら別の理由があるのかもしれない。
光「今までの営業形態を変えてでも2人の雇用に拘るのには他に理由があるんでしょ、何となく「腰が痛い」だけじゃ納得がいかないんだけど。」
まさか俺の気持ちを代弁してくれるとは、嬉しい限りだ。
渚「大学の料理科に通ってでも「拉麺屋台をやりたい」って言ってくれているんだよ、私だってその気持ちに応えてやりたいと思うじゃ無いか。」
光「お母さん・・・。」
「2人の成長を見守りたい」という渚の強い意志から「母性」というものを改めて感じた光、母と兄弟がただの「店主とアルバイト」の関係では終わらない気がしてならなかった。
渚「私はね・・・、2人に私の全てを教えても良いと思ったんだ。「あの時」の私は大した事をした覚えが無かったのにそれでもあの子達は覚えていてくれたんだよ、嬉しくなるじゃ無いか。」
光「お母さん・・・、もしかして泣いてる?」
一瞬だが母の目から感動の涙が流れた様に見えた光、正直渚がこんな感情を表した事が今までにあっただろうか。
渚「やっぱり歳なのかね、最近涙もろくて仕方が無いんだよ。」
渚は袖で涙を拭う動作を見せたが転生者は歳を取らない上に涙は一滴も流れていない。
渚「空気を読めないのかい、余計な事を言うんじゃ無いよ。」
光「えっ・・・、そうなの?!」
光さん・・・、お母さんの袖を確認して見て下さい・・・。
光「ちょっと見せて・・・、本当だわ。全然濡れた痕跡が無い。」
渚「もう・・・、折角良い雰囲気だったのに・・・。」
場の雰囲気を壊す発言をしてしまった事に関しては謝るが俺は事実を言っただけである。
渚「まぁ良いさ、兎に角私はあの2人を雇うからね!!」
光「お母さん、私には関係無い事だから別に良いけど勝手にしちゃ駄目でしょ!!シューゴさんに言わなきゃ。」
そう言っているとその場の様子を『探知』していた1号車の店主から『念話』が飛んで来た、因みに本人は現在ダンラルタ王城内にいた。
シューゴ(念話)「ずっと聞いてましたよ、そこまで行くと誰が何と言おうと渚さんは聞きませんから許可させて頂きます。」
渚(念話)「流石シューゴさんだ、話が分かる人だね。」
「調子のいい奴め」と言いたくなるが今は言わないでおこう、ただ今に始まった事では無いがどちらが上の立場の人間なのかが分からないのは否めない。
シューゴ(念話)「その代わりしっかりと育てて下さいよ、もしかしたら「暴徒の鱗」の未来を担う子達になるかも知れないんですから。」
渚(念話)「何だい、私の事が信用できないのかい?ロラーシュだって立派な店主になれる様にしたじゃないか。」
シューゴ(念話)「あの・・・、実は今そのロラーシュさんの事で今王城に来ているんですけど・・・。」
急に話が変わった上に何となく重苦しい口調のバーサーカー、渚の脳内で嫌な予感がよぎったのは師匠としての責任があるからだろうか。
渚(念話)「何だい・・・、あの子また何かをやらかしたのかい?」
シューゴ(念話)「違うんですよ、勘違いさせてすみません。実はもうすぐ完成する店舗の外壁で悩んでいましてね・・・。」
実は数日前、ロラーシュ自身が「店の外壁を目立つ様にしたい」と申し出た様で・・・。
シューゴ(念話)「派手な色にすると景観を損なうかもしれないので難しくて・・・。」
どんな色にしたんだよ・・・!!




