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1人頭を悩ませる結愛
-511 将来-
兄弟の勝利にその場にいた観客(とすっかりなってしまっていたお客さん)達が湧き上がる中、貝塚財閥代表取締役社長は1人腕を組んで考え込んでいた。きっと貝塚学園の理事長として「生徒や学生に可能な限り寄り添いたい」という想いが強かったのだろう、ただ先程も気になる台詞を言っていた様なそうでも無い様な・・・。
結愛「なぁカラン、盛り上がっている時に申し訳ないんだけど1つ聞いても良いか?」
相手が答えやすくなる様に出来るだけ下手に出て質問する結愛、こう言った気遣いの1つひとつが大企業の信頼を取り戻したと言っても過言では無いかも知れない。
カラン「理事長先生が・・・、俺達に聞く事なんてあるんですか?」
結愛が教鞭をとる経済学の講義を受けている2人が理事長に質問する事はよくある事だがその逆は正直言って初めてだった、ただ聞こうとしていたのは1人頭を悩ませていた「あの疑問」。
結愛「あのさ・・・、料理科を卒業して就職する先でどうして「中型免許」が必要なんだよ。厨房での調理を仕事とするなら必要無いと思うけど何か考えがあるなら教えてくれないか?勿論2人がどう言った将来を歩もうと俺は否定しようと思わないから安心してくれ、どちらかと言うと「参考にさせて貰えたら嬉しいな」的な。」
ミル「そうなんですね、だったら・・・。言っても良いかな、兄ちゃん。」
自分達が今抱く目標を話す事にどうして抵抗しているのだろうか、まさかその場にいる者達が関係しているのか?
カラン「先生も「参考に・・・」って言ってたから良いんじゃないかな、まぁ俺達の考えが参考になるとは思えないけど。」
逆に「参考にならない様な将来の目標」とは何なのだろうか、少しだけ興味が出てきたが今はやめておくべきだろうな。
ミル「俺達・・・、大学を卒業したら「貝塚運送」に就職しようと考えているんです。」
結愛「「貝塚運送」って貝塚財閥がやってる引越しとかの業者だろ?何で料理科を卒業する必要があるんだよ、高卒の状態でも十分働けるからどうせなら車の免許を取ってすぐに入社した方がより一層稼げたんじゃねぇのか?」
確かに理事長の意見も分からなくもない、しかし兄弟にとっては「お金が全て」という訳では無かった様だ。
カラン「それもそうなんですけど、貝塚運送で働いて稼いだお金でお店を出そうと思っているんです。」
ミル「兄弟2人でやりたいなって思っているので「出来れば屋台じゃなくてキッチンカーにしよう」って話し合っていたんですよ。」
将来的には仲の良い兄弟2人でお店を出そうという立派な考えがあった様だ、大学の料理科に通っている事も頷ける。
結愛「因みにだけど・・・、何のキッチンカーを出そうって思ってんだ?」
それが1番気になる、何のお店を出そうかによってこれからどういった内容の勉強を行うかが相当変わって来るからだ。
カラン「1つしか無いですよ、俺達の恩人である渚さんを見習って拉麵を提供するキッチンカーを出したいんです!!」
「あの時」食べた思い出の味をずっと覚えている兄弟、きっと一生かけて自分達を救ってくれた人達への恩を返したいのだろう。
結愛「そう言えば・・・、お前たちのいる料理科って混沌龍のヌラル・ブラッディと同じじゃ無かったか?」
久々に名前が挙がった「ヌラル・ブラッディ」と言えば確か好美がオーナーとなっている「ビル下店」でアルバイトをしていた様な・・・、違ったか?
カラン「そうですね、一緒です。実は空き時間に図書館で一緒に勉強しているんです。」
どうやらこの世界の魔獣達はこちらが思っている以上に勉強熱心の様だ、これからの将来が楽しみで仕方が無い。
2人の将来は如何に(今更だが同棲生活に関係あるか)?