506
2人の舌は大丈夫なのか?
-506 本当の恐怖の始まり-
結構な時間を費やした激辛対決を眺める守も渚がお気に入りで見ていた番組を見ていた様でその流れから嫌な予感がしていた(予め言っておきますが別にその番組や演出が悪い訳では無いのでご安心頂けたら助かります)、屋台の方をチラリと見てみると渚がせっせと作業を行っていた(拉麺が食べたくなったお客さんでもいたのだろうか)。
結愛「守・・・、さっきの台詞はどういう意味なんだよ。ちゃんと教えてくれないと分からねぇだろうが。」
やはり結愛は社長だからテレビ番組を見る余裕が無いので全くもってチンプンカンプンとなってしまっている様子だ・・・、と思ったのだが。
守「おいおい、お前もあの番組を毎週見てるって言ってたじゃねぇか。どういう意味だよ。」
結愛「最近機械の調子悪くて録画できてねぇんだよ、暫くの間見えて無くてションボリなんだ。」
守「光明に頼んで修理してもらえば良いだけじゃねぇか、あいつなら余裕だろ?」
結愛「いや・・・、頼んでも良いが後が怖いだろうがよ。何を請求されるか。」
後から何を要求されるか怖くなって最近に至っては気軽に頼み事が出来なくなった結愛、代表取締役社長夫婦も大変なんだな・・・(結愛達だけだと思うけど)。
結愛「それは良いとして・・・、これから何が起ころうとしているんだよ。」
守「もうすぐ麵や具材が無くなるだろ?そこからが本当の恐怖の始まりなんだ。」
守は説明しながら1人震えていた、何となく流れが見えてきた様な・・・。
カラン「後はスープだけだな。おたまにすくって・・・、っと。」
ミル「兄ちゃん、まずい事になったかも知れないよ。さっきからずっとこのスープに辛い物が皆浸かっていたという事は・・・。」
守「やっぱりか・・・。」
そう、ただでさえトリニダート・スコーピオンとブート・ジョロキアが沢山使われたスープだと言うのに具材全てにも使用されていたという事は・・・?
結愛「な・・・、何だよ・・・。創造主まで勿体ぶらずに言ってくれよ。」
仕方ねぇな、守の代わりに言ってやるよ。具材から辛み成分が溶け出してスープの辛味が増してしまっているって訳だよ、いくら辛い物が好きな兄弟でも耐え切れなくなってしまうんじゃねぇかという事だよ。
結愛「成程ね・・・、それはまずいな・・・。」
心配する転生者達をよそに少しずつだが着実にスープを飲み進める兄弟、2人はよっぽどと言えるレベルの辛い物好きの様だ。ハッキリ言って俺も頭が上がらない。
そんな中、対決が始まって30分が経過した。「もうスープだけなので兄弟の勝利は決まった様な物だな」と周囲の者達が思い出したのだが、この世の中はそう甘くない(だって相手はあの渚だぞ?)。
渚「さて・・・、あと20分になったから麺を追加させて貰うよ。」
兄弟「え?!そんな事言ってたか?!」
渚「何だい、私がいつ「これで全部」なんて言ったんだい。追加があっても十分おかしくは無いと思わなかったのかい、それにこっちの方が残ったスープを飲み干すのに丁度良いだろう?」
渚自身は良い様に捉えているが兄弟からすれば完全なる「余計なお世話」だ。
守「より一層辛くなったスープに増えてしまった麺・・・、状況的に最悪だぞ。」
結愛「赤姉さん・・・、本気だな・・・。」
よく考えてみれば「赤姉さん」という呼び方自体が久々ではあるが今はそれ所では無い。
守「それにただただ辛くなった訳じゃ無いはずだ、ずっと鍋を火にかけていたからな・・・。」
結愛「まさか・・・。」
ずっと煮立たせていたスープはすっかりドロドロとなってしまっていた、それにより一層辛さが増してしまったので正に「地獄」。そしてそれを作りだした渚は正に「赤鬼」。
守「俺は食える気しないな、アイツら凄すぎだろ・・・。」
結愛「俺も見習わなきゃな、食べたくは無いけど・・・。」
俺も無理




