504
渚、何をしたんや
-504 工夫(仕掛け)と迷惑-
2人の様子から渚が麺に施した仕掛けに気付いたと推測される兄弟の様子を見守る光の傍らから聞き覚えのある男性の声がして来た、正直言ってこの人無しではこの仕掛けを施す事は全くもって出来なかっただろう。
男性「本当渚さんには困ったもんだよ、お陰で工房の中が滅茶苦茶だし刺激臭が漂っちゃって俺自身は大丈夫だったけど他の人達がほぼ1日マスク無しで生活できなくなってたし。」
光「寄巻部長、いらしてたんですか?!」
突然の事過ぎて過去の呼び方をしてしまった光、と言うかその人があんたの叔父だって発覚してから何年経ったのか分かってんの?
一秀「おいおい光ちゃん、「寄巻」は昔の名字で今は「一」だって。」
光「そうでした、本当に申し訳ありません。」
一秀「それに何で親戚同士なのに敬語なの、もしかして俺が君の叔父だってことを忘れた訳じゃ無いよね?」
光「そうだった・・・、久々に会ったからすっかり忘れちゃってたよ。「敬語」も焦っちゃってただけ、本当にごめんなさい。」
2人が今いるのは異世界だから「まさか」と思って確認するけど、一秀が光の叔父だって分かったという「状態」が「異常」とみなされて『状態異常無効』によりそれらが無効になっちゃのかと思ったんだが違うのか?
光「流石にそれは違うって、その証拠にお母さんがにこやかな笑顔でやって来たよ。」
元の世界にいた頃に亡くした旦那の兄の登場を喜んでいるのか、何とも嬉しそうに近づいて来た赤鬼。
渚「一ちゃんじゃないか、来てくれたのかい。」
一秀「そりゃあそうだよ、ナギさん。初めて「あれ」を食べたお客さんがどうなっちまうか気になって仕方が無くてね。」
いつから互いの事を「一ちゃん」「ナギさん」と呼ぶ様になったのか、俺の知らぬ間に2人は結構仲良くなったらしい(義理の兄妹だからなのかな)。
渚「あんたも心配性だね、大袈裟過ぎやしないかい。」
一秀「よく言ったもんだよ、うち自慢の工房を悲惨な状態にした癖に。」
渚「そ・・・、そうだったかね・・・。」
理由を想像したくは無いが一秀がいつも作業をしている製麺所(工房)には未だに刺激臭が漂っていた、それが故に誰も近づけない状況なので片づけが全くもって出来ていない(一応食品を扱う場所なんだから綺麗にしとかなきゃ)。
一秀「今日は社長に言って何とか対応して貰ったけど明日からどうすんの、ちゃんと元に戻しておいてよ?」
光「お母さん、どんだけ人に迷惑をかけたら気が済むの・・・。」
渚「分かったよ、元に戻せば良いんだろう?」
渚は普段一秀が使用している工房へと『瞬間移動』した後、『状態変化』と『状態異常無効』を駆使してその場を元に戻した。
光「叔父さん・・・、それでお母さんはあの麺に何をしたって言うの?」
一秀「はぁ・・・、会話の流れで想像がつくと思うけど説明するよ。渚さんはね、麺に・・・。」
一秀が説明しようとした同じタイミングで「やはりか・・・」と言わんばかりに麺を持ち上げながらため息をつくカラン、その様子をすぐ傍で見ていたミルも目を背けたくなっていた様だ。
カラン「ミル、やっぱりこの麺って・・・。」
ミル「そうだな、麺自体が真っ赤になってるな・・・。」
改めて麺をまじまじと見た兄弟は先程以上に大きなため息をついた、ハッキリ言ってそんな余裕などないと思われるが大丈夫なのだろうか。
光「「麺自体が真っ赤」ってまさか・・・。」
一秀「そうだよ、渚さんは麺の生地にトリニダート・スコーピオンとブート・ジョロキアの粉末を練り込んでいたんだ。お陰で工房が滅茶苦茶だよ・・・。」
光「全く・・・、本気なのは良いけどもうちょっと考えなきゃ・・・。」
そんな中、兄弟は鍋の中の「ある物」を食べて苦しんでいた・・・(次は何だよ)。
まだあるのけ?