503
地獄の始まりだ・・・
-503 本気-
渚によって運ばれた料理(?)はもう何が入っているのかが分からない位に真っ赤に染まっていた、まるで「赤鬼」の髪やエボⅢの色みたいな・・・。
結愛「遂に出来ちまったよ・・・、あいつらはどうなるんだ・・・?」
いち観客として、いや兄弟の保護に関わった者としてやはり心配になってきた結愛。流石に死者は出ないはずだが渚が「本気で行かせて貰う」と宣言していたので容赦しているとは思えなかった様だ。
渚「さぁ食ってみな、渚特製(と言ってもまだ試作段階)の「赤鬼ラーメン 地獄の赤」だよ!!」
土鍋の中でぐつぐつと煮立っている中身は「ラーメン」とはなかなか呼びづらい代物だった、というか渚が自ら「赤鬼」という表現を使ったのは初めてだったのでは無いかと思ってしまったが今はどうでも良い話か。
好美「「地獄の赤」・・・、何ていうネーミングセンスなの・・・。」
守「いや好美、名前がどうこう言っている場合じゃ無いと思うぞ・・・。」
そこにいた転生者達には『状態異常無効』があるので何の問題も無いのだが、住民達にとっては相当な物と言える位の唐辛子臭(いや刺激臭)が漂っていた様だ。「渚が作っていたのは本当に食い物かどうか」を疑ってしまう位のこの状況、誰かに何とかして欲しいのが本音と言った所か(2名しか出来ないと思うが)。
渚「制限時間は50分、「待った」や「チーズ投入」等は無しだ。では・・・、スタート!!」
兄弟「頂きます!!」
光「いや3人共、何処でその演出を学んだのよ・・・。」
恐らく渚がやりたかった通りをそのまま再現したと思われるが「「待った」や「チーズ投入」等は無し」というオリジナルのルールがある様なのでセーフと思いたい、もしもアウトなら大人の事情的な事を考えないといけないしな・・・。
そんなこんなで始まった激辛対決だが、この温暖な気候の空の下でグツグツと煮立った土鍋料理を食べている時点で「我慢対決」も兼ねている様にも思えて仕方が無い(『人化』している時の兄弟は普段から薄着なのでそんな事も無いかも知れないが)。
カラン「あちぃな・・・、流石火にかけているままで提供しているだけはあるぜ。」
ミル「そうだな、汗が全身から噴き出て来そうだ・・・。」
そこにいた全員が「そこなの?」と聞きたくなっていたが実はこれも渚の狙いの1つだったりしたらしい、兄弟は赤鬼の思惑通りに手元の水に手を出そうとしたがとある事を思い出して抵抗した。
渚「ん・・・?まさか気付いたのかね・・・?」
光「お母さんったら・・・、気付いていないと手を止めないって。」
母娘が傍らでひそひそと話すのを横目にどんどん食事を進めて行く2人、それにしても先程から気になる事が・・・。
カラン「ねぇ渚さん・・・、これって何が入ってんの?」
ミル「本当だよ、全部が真っ赤だから分からないよ。」
それもそのはず、渚は仕込みの段階で全ての具材にトリニダート・スコーピオンとブート・ジョロキアをたっぷり使った門外不出の調味料を練り込んでいたのだ。これだと先に出てくる言葉は「赤い」より「辛い」の方が正しいのでは無いだろうか。
渚「ざく切りにしたキャベツやモヤシ、うちの特製叉焼等をこの試作用にアレンジしたのさ。どうだい、スープの辛さと相まって口の中が凄い事になっているだろう。」
ミル「そうだな、汗がずっと止まらないのは辛さに加えて熱さも手伝っているからだよな。」
渚「そうさね、ただ私の狙い通りあんた達は水を飲もうとしていたけど抵抗したみたいだね。もしかして・・・、気付いたのかい?」
カラン「ああ・・・、水を飲んで口を休ませた後は感じる辛さが増長される事をな。」
渚がカセットコンロを使用して熱々で提供した理由はそこだった、しかしこの空気だとまだ秘密がある様だ。
ミル「ねぇ・・・、この麺ってあまり啜らない方が良くない?」
カラン「何となく「あの時」食った物と違うし啜り過ぎるとむせそうだ。」
それもそのはず、渚は麺自体にも工夫(仕掛け)を施していたのだ(何処までガチなの)。
渚は何が狙いなのだろうか・・・




