⑤
イャンダはこの男性に対して少しふざけていた様だ。
-⑤ 冷静な対処-
内線の声の主は吉村 光の旦那であるナルリスの弟で、吸血鬼の家系に生まれた元黒竜将軍である「暴徒の鱗」副店長のデルア・ダルランであった。
デルア(内線)「ごめんごめん、イャンダが面白がって言うもんだから俺もついいじりたくなってさ。気を悪くしないでおくれ、後でサービスさせて貰うから。」
守「気にしてませんよ、元の世界でも結構「変態」って呼ばれていましたし。」
確かに光や好美による「プロレスごっこ」の被害(?)を受けていた時、顔がニヤケついていたので変態であるという事は否めない。
デルア(内線)「そうか、それなら良かったんだ。それはそうと好美ちゃんいるかい?」
守「いますけど・・・。」
つい後ろを振り返る守、目線の先では食卓で好美が未だに手酌酒をしている。顔は先程以上に赤くなっていた。
デルア(内線)「いるけどどうしたんだよ。」
守「すみません、先程から日本酒呑んで陽気になっていまして。」
好美が気を悪くしてはいけないと表現を変え、好美が泥酔しているという事を伝えたのを察したデルアが今度は守に気を遣い始めた。
デルア(内線)「なるほどな・・・、そりゃまずい事になったかも知れないな・・・。」
重苦しい雰囲気を醸し出す副店長に少し焦る守。
守「まずいってどういう事ですか・・・?」
デルア(内線)「ごめん、確か好美ちゃんって今夜夜勤だったんじゃなかったかなー・・・、って。」
守「確かにあの状態だと起きても夜勤には行けそうにありませんね、ちょっと本人に確認してみます。」
守は刺身を肴に5本目の熱燗を楽しむ好美の肩をそっと叩いて尋ねた。
守「こ、好美・・・。今夜、もしかして夜勤じゃないのか?デルアさんって人が心配してるんだけど。」
すっかり泥酔した好美は上手く呂律が回りそうになかった。
好美「なぁにぃ?デルア?内線来てんのぉ~?」
ふらつきながらもデルアからの内線に出た好美。
好美「2人して何?お楽しみ中のオーナーを呼び出しても良いと思っている訳?」
デルア(内線)「何ってこっちが言いたいよ、今夜夜勤じゃないの?呑み過ぎは禁物だって。」
デルアの心配とは裏腹に好美には何の問題も無い様だ。
好美「有給取ったから大丈夫だって・・・、折角守と住むことになったのにクリスマスに仕事なんてしたくないもん。」
どうやら好美は「恋人との時間」をじっくりと楽しみたい様だ。
デルア(内線)「そうか・・・、休みなら良いんだ。まぁ、ごゆっくりお過ごしください。」
少し気まずさを感じながらフェードアウトする様に副店長が電話を切った後、好美の本心に気付いた守は急ぎ荷解きを終えて食卓へと向かった。
守「ご・・・、ごめん。お待たせ。」
好美「遅い、女の子を待たせても良いと思っている訳?」
泥酔しつつも重みのある一言を浴びせる好美。
好美「分かったなら早く生ビール追加して!!」
守「すいません、分かりました・・・。」
内線横のタッチパネルで生ビールを注文する守にあの女性から『念話』が飛んで来た。
女性(念話)「お前、こっちの世界でも好美の尻に敷かれてんのかよ。」
相も変わらず「あの性格」が健在なあの女性だ・・・。