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ここ、トンカツ屋だよな・・・
-496 好きだからって・・・-
上級人魚が驚くのも無理は無い、慌てた様子で店から飛び出して来た父はガスマスクに防護服を着用していたのだ。一応確認するがここってトンカツ屋だよな、そんなのを着るタイミングなんてあったか・・・?
メラルーク「仕方が無いだろう、ついさっき入って来た学生達がやたらと唐辛子を振りまくるからこういった格好をしていないと対応しきれないんだ。もう店中の唐辛子が無くなりそうな勢いだよ、どれだけ換気しても追い付かないしどうすればいいんだよ・・・。」
渚「やっぱりか・・・、嫌な予感がしていたんだよね。」
頭を抱えてため息をつく赤鬼の言葉に速攻で喰らいつく紫武者、この様子だとどうやら渚は過去に同様の経験をしている様だ。
真希子「あんたそれどういう意味なんだい、知っているなら教えておくれよ。」
渚は2人が被害に遭った誘拐事件について改めて真希子達に話した、因みに結愛は夫・光明から報告を受けていたので「全く知らなかった」と言えば嘘になる。
渚「実はその後、まだ下級だったあの子達が私の屋台で食事をして行った事は話しただろう?」
貝塚財閥代表取締役社長は酒に酔って覚えていないと推測できるが「お風呂山」で散々走りまくった真希子が愛車から降りて来た時、その場に渚の屋台があったので不自然に思った筆頭株主がその理由を聞いていたとの事で・・・。
真希子「確か・・・、屋台の端っこにずっと貼ってある伝票と関係する話だったかね。」
渚「そうさね、結愛ちゃんがまだ小さかったあの子達と写っている写真を横に添えてあっただろう?」
真希子「「大切な約束だから」ってあんたがずっとメモを大切にしていたやつの事だね?」
渚「その事だ、その時あの子達は自分達の食べていた物に内蓋が緩くなっていた唐辛子をぶちまけちまったんだよ。」
真希子「その事もあんたから聞いた事があったね、それがきっかけで始まったのが「辛辛定食」ってやつだったんだろ?」
どうやら2人が食事をしている様子を見ていた渚が「激辛好きのお客さんの為に」と思いついたという「辛辛定食」というメニューが存在している様だ(今の今まで知らんかったが)、ただそのメニューに関して不自然な点が1つあったので真希子は以前から気になっていたらしい。
真希子「そう言えばあんた、その定食の別名を「ケルベロス兄弟定食」にしていたけどまさかこういう理由だったのかい?」
一般的な話(ギリシャ神話)ではケルベロスは甘いお菓子を好むとされているがこの世界では真逆となっている、その上例の兄弟は幼い頃に「激辛道」へと目覚めていた様で・・・。
渚「そうさね、あたしも人から聞いた事なんだけどこの世界に住んでいるヘルハウンドやケルベロスは皆舌が燃える位の辛い物が大好きな様なんだ。ただ「2人がもう1度私の屋台に来た時にちゃんと約束を思い出せるように」と別名を付けていたんだよ。」
この世界に住むヘルハウンドやケルベロスの中でも兄弟の「激辛好き」はずば抜けているらしく、実は3国中で様々な店の店主が白旗を挙げる事態が多発していた。
渚「この原因を作っちまったのは私の様だから責任を取らないといけないみたいだね、それにしてもあの子達は何を頼んだって言うんだい?」
メラルーク「800円の「学生定食」だよ、確かに「味付けは好きにしても良い」っていつも言っているけどあの2人が来る度にこうなっちゃうんだよな。」
店主曰く、初めての事では無いので先日から2人が来店した際には防護服やガスマスクを必ず着用する様にしているらしい。それだといくら何でも2人に失礼なのでは無いだろうか、一応お客さんとして来ているんだぞ?
メラルーク「「他のお店の人もそうしているからもう慣れた」って言ってくれていてね、ただどんだけ唐辛子が好きなんだよ・・・。在庫が無くなる勢いじゃ無いのか?」
自分達の座っている席に備え付けられている物だけでは足らない様で、他のテーブルからも唐辛子をかき集める程になってしまっているらしい。「好き」という物がここまで極まると他の者はどうする事も出来ない、それが故に「ハハハ・・・」と笑うのみだった。
渚「こりゃとんでもないモンスターを産んじまったみたいだね、さてどうするか・・・。」
渚、責任取ろうか・・・




