494
俺も腹減って来た・・・
-494 どうしてここに?-
腹を空かせた「赤鬼」の姿を見てあからさまにドン引きする「紫武者」の横で結愛はステーキを焼き続けながら何かを必死に思い出そうとしていた、ただこの催し物の忙しさにより難航している様だ。
結愛「あの2人・・・、以前見かけた時もそうなんだが何処かで見た事がある気がするんだよな・・・。」
仕事で多くの人達と会話を交わすが故に1人ひとりの顔を覚える事に実は苦戦している結愛、その気持ちは分からんでも無いがやはり相手の立場になったら「覚えてくれている方が嬉しい」という人達が多いと思われるのでその気持ちに応えたい一心でもある様だ。
そんな中、未だ食事にありつけない渚は店の前で倒れかけていた(正直俺がメラルークの立場だったらやはり迷惑に思ってしまうが言葉にするのはやめておいた方が良いのかも知れない)。
一先ず「空腹を紛らわす手助けになれば」と気遣った真希子は兄弟との勝負の話題を振ってみる事に、無事に時が過ぎれば良いのだが・・・。
真希子「ねぇ渚、やっぱり気になるから教えておくれよ。どうして「その場では決着がつかなかった」のさ、全く持って意味が分からないんだよ。」
ふと思ったのだが真希子が渚の事を名前で呼んだ事など今までにあっただろうか、まぁそんな事は考えるだけ無駄かもな。
渚「そうだね・・・、「その場では決着がつかなかった」というよりは「しなかった」と言った方が良いのかも知れないね。」
真希子「何だいそれは、回りくどい言い方しないでおくれよ。」
依然落ち着こうとしない客足により「忙しいったらありゃしない」という一心だったはずなのだが転生者達の様子を伺ってみると結構余裕がある様にも思える、下手するとその場で余裕を失っているのは渚1人だったのかも知れない。
渚「仕方が無いね・・・、実はと言うと兄弟は2人仲良く貝塚学園大学に通っているんだけど次の日の授業が1限からだったみたいですぐ帰っちゃったんだよ。結愛ちゃんも学園で会った事があったんじゃ無いかい?」
渚に言われて改まったかのように思い出そうと必死になる結愛、これは完全に忘れていた感じの空気が漂ってんな。
結愛「自慢じゃ無いですけど貝塚学園も結構広いし学科も多いですからね、多種多様の生徒・学生が右往左往しているので覚えきれないですよ(でもそう言えばもう1人知ってる奴と一緒にランチを食ってる所を見た様な気がするな・・・)。」
渚「まぁあんたがそう言うのも仕方が無いね、今や貝塚学園と言えばこの世界の全住民が「行きたい」って熱望する学園だからね。」
結愛「お陰様で有難いですよ、あはは・・・。」
何となく嘘をついている事を社長の様子から読み取った筆頭株主、しかし今はゆっくりと様子見してみるのも一興だとも思っていた。
真希子「そんなにも学生達が多いと言うのならいっその事入試のレベルを上げたらどうなんだい?」
結愛「いくらおば様に言われましても無理な話ですよ、毎年無能な私なんかと一緒に試験問題を作ってくれている方々に無理は言えませんからね。」
全くもってその通りだ、ずっとこの世界に暮らしていても歴史などの知識はほぼ皆無と言っても良い位なのだ。ましてや言語に至っては『自動翻訳』があるので「学ぶ必要性を感じない」という意見が出て来てしまう、やっぱり転生者達が羨ましくて仕方が無い。
結愛「おい創造主、余計な事言うんじゃねぇよ。」
だって本当の事だろ、否定するのは生徒達みたいに他種族の言語を学んでから言いやがれ。結構苦労しているやつが多いんだぞ、例えば大食いのハーフ・ヴァンパイアとか・・・。
渚「あんた・・・、それ私の可愛い孫娘の事を言ってんじゃ無いだろうね・・・。」
そ・・・、そんなつもりは無いですよ・・・(実はその通りなのだが)。
まぁそれは良いとして結愛、無意味みたいだからもう隠すのはやめておけよ。
結愛「「無意味」ってどういう事・・・、ってあれ?何で2人がここに?」
ミル「それはこっちの台詞ですよ、俺達はランチを食べに来たんですけど。」
カラン「先生こそ何でいらっしゃるんですか?どうしてステーキを焼いているんです?」
学生って自由やけん羨ましいな・・・




