㊾
先程の好美の被害を大いに受けた美麗。
-㊾ これから美麗はどうする?いや、どうなる?-
元の世界にいた頃と変わらない様子の恋人達を見て少し安心した美麗は、1日の間に色々あり過ぎて動揺していたが故にやっと落ち着いた様子でチェアに座っていた。
美麗「いい加減私も呑ませてくれないかな、それとびしょ濡れになっちゃったんだけど。」
好美「あれ?まだ呑めてなかったの?じゃあ着替えてたら呑んで良いから。」
確かに先程からずっとビールを要求して来てはいたが、何かしらありすぎて最初の1杯にありつけずにいた。
美麗「着替えたよ、もう・・・、ずっと美味しそうに呑んでるのを見ているだけだったんだもん。早く頂戴よ。そこに好美が買って来たやつがあるじゃん、それ頂戴。」
好美「これはダメダメ、冷蔵庫に在庫があると思うからそれ呑んで!!」
しかし、好美の考えとは裏腹に冷蔵庫の中はすっからかんだった。
好美「待ってよ!!さっきまで沢山入れてあったじゃない!!」
守「悪い・・・。」
頭を掻きながら好美に近付く守。
守「ピューアの事を聞きつけた母ちゃんが来て全部呑んじゃったんだ・・・。今トイレに行ってると思うんだけど・・・。」
好美がプールに落ちる数分前の事だ、ピューアが料理を振舞うと聞いた真希子が師匠として腕を確認しに来ていたのだった。
真希子(回想)「大丈夫なのかね、一応私の弟子ではあるピューアの料理があんたの口に合うか心配で仕方ないんだよ。」
守(回想)「母ちゃん、その割には結構楽しんでいないか?」
真希子(回想)「何言ってんだい、食事は楽しく食べる物だろう。厳格だったり暗い雰囲気で食べて美味しい料理がある訳が無いだろう。」
真希子の言っている事は間違いではない、しかし次の瞬間、紫武者は驚きを隠せずにいなくなってしまったのだった。
美麗(回想)「おばさん・・・、どうも・・・。」
真希子(回想)「いや・・・、ここも元の世界により一層近づいたんだね。この様に王麗ん所の美麗ちゃんがいて・・・、って何で美麗ちゃんがいるんだい!!いつもと服が違うし!!」
美麗(回想)「いや色々と・・・、話せば長くなるんだけど・・・。」
しかし、現実世界でも異世界でも関係なく起きてしまった事は仕方がない。真希子は落ち着きを取り戻したいのか、キッチンの方向に向かって暫く戻って来なかった。
守(回想)「あれ・・・、嫌な予感がするな・・・。」
守が母親の向かった先へと向かうと、予感した通り真希子は冷蔵庫の前で酔っぱらって眠っていた。
守(回想)「母ちゃん、寝るなら家に帰ってからにしてくれよ。すぐ下の階だろう?」
真希子(回想)「良いじゃないか、まだ弟子の料理食べて無いし好美ちゃんにも会わせておくれよ・・・。」
守(回想)「何言ってんだよ、早く帰れよ。」
真希子(回想)「この子ったら強情だね・・・。」
それから数分程、真希子は大人らしからぬ姿でぐずって自室へと戻って行った。
さて、話は美麗の話題へとなっていく。
好美「ねぇ、こっちの世界に来たのは良いけど美麗の仕事と家を何とかしなくちゃね。」
美麗「本当だ、呑んでる場合じゃないじゃん。お金と家と仕事が必要じゃん」
正直、酒に口を付ける前に気付いて欲しかったが。
好美「家に関してはこの下が数部屋程空いてると思うから大丈夫だとして、問題は仕事よね。一先ず・・・、後で珠洲田さんの所に行ってみるか。」
それから数分後、不動産屋へ空き部屋の確認をしに向かった後に立ち寄った時、ギルドの受付を兼ねる店先で珠洲田は1人頭を抱えていた。
好美「おじさん、どうしたの・・・?」
どうして珠洲田は頭を抱えているのだろうか。