492
即座に勝負をさせようとしない光
-492 車の無い「赤鬼」-
「赤鬼」の軽はずみな発言を決して聞き逃さなかった娘の光はまた嫌な予感がして来た様で1人目の前が真っ暗になっていた、しかし色々と考慮に入れないといけない事があったはずだが・・・?
光(当時)「お母さんったらまた何を思いついたって言うのよ、まさかと思うけど兄弟が俊足だからって「お風呂山」の下り(ダウンヒル)で勝負するつもりじゃないでしょうね。」
渚(当時)「そんな訳が無いだろう、私の車(エボⅢ)が今修理中だって事はあんたが1番理解しているはずなのにどうしてそんな事を言うんだい。」
確かつい先程利通の車を借りてドリフトしようとしていた事を思い出した光、ただいくら何でもそれは無茶苦茶過ぎやしないだろうか。
光(当時)「でもお母さんが「一勝負」って言った時は大抵ドリフトだったと思うんだけど違ったの?」
渚(当時)「あながち間違っては無いんだけどね、流石にそこは自分のじゃないと全力を出せそうに無いから抵抗を持っちゃうのさ。」
光(当時)「「全力」ね・・・、お母さんの全力に追いつくような走り屋なんていたかな。」
渚(当時)「何だい、勝負するからには「全力で戦う」のが相手への敬意ってもんだろう。それとも私にハンデを付けるとでも言うのかい?」
何となくだが下りでの勝負の空気になって来た気がしてならないのだが、光自身に今日は走るつもりが無いのでカフェラッテを借りる事も出来やしない。
光(当時)「お母さんならどんだけハンデを付けても無意味みたいなもんでしょ、ネフェテルサ(いやこの世界)でお母さんに勝てる走り屋なんて聞いた事もないもん。」
渚(当時)「だからって車が無けりゃ走る事自体が出来ないじゃ無いか、あんたはもうちょっと頭を使いなさいな。」
「ずっとウォーターベッドで寝ていた様な奴に言われたくないわ」という台詞が頭をよぎったが母親の名誉の為にぐっと抑えた光、しかし気にするべきなのはそこでは無い。
光(当時)「じゃあ頭のいいお母さんは車無しで何の勝負をしようってのよ、しかと見せて貰いましょうかね。」
渚(当時)「やっと親の偉大さが分かった様だね・・・。単純な事さ、今の私にはエボⅢがなくてもあれがあるだろう?」
渚の指し示した方には普段仕事で使っている相棒と言っても過言では無い「屋台」がポツンと置かれていた、それを見て再び嫌な予感がして来た光。
光(当時)「お母さん!!いくらエボⅢがないからって屋台(あの子)でドリフトするつもりなんて言わないでよね?!」
渚(当時)「あんたね・・・、声がでかいよ。鼓膜が避けるじゃ無いか。」
きっと光でなくとも誰だって止めたくなる物だと思われる、理由は1つだけ。
光(当時)「だって大切な食材や調理道具が載っているのにそんなのでドリフトなんかしたら騒動になるに決まってるでしょ!!」
渚(当時)「あのね・・・、いくら私が馬鹿でもそんな事する訳が無いだろう?」
この人ったら自分の事「馬鹿」だって認めちゃってるよ・・・、悲しくならないのかな?
光(当時)「お母さんなら十分あり得るから言ってるんでしょうが!!」
渚(当時)「光ね・・・、軽バンやトラックでドリフトする様な奴が何処にいるってのさ!!」
そう言えばいた様な気がする・・・、確かビールを運ぶ用の中型トラックでドリフトしてた奴。そして親にメッタメタに怒られていた様な・・・。
光(当時)「じゃあどうやって勝負しようっての、屋台で出来る様な勝負ごとなんて聞いた事が無いよ。」
色々と想像はつくが今は流れに任せてみようか。
渚(当時)「そうだね・・・、この子達の得意分野で勝負しても良いかもね。」
光(当時)「「得意分野」ね・・・、何だっての?」
ケルベロス(やヘルハウンド)に初めて相対する光はチンプンカンプンとなっていた。
渚(当時)「あんた達、昔食事した時の事を覚えているかい?」
心温まるエピソードでもあったか?




