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どうやら渚の密かな趣味が関係している様だ
-490 尊敬する-
実はまだ兄弟がまだ下級であった当時、渚は「一期一会」の言葉を大切にしていた為に自分の屋台へと来てくれたお客さん達の写真を撮るという隠れた趣味があった。「赤鬼」曰く「1つひとつの出逢いを大切な思い出として残していたい」という気持ちから屋台のいたる所にそうやって写した沢山の写真を貼り付けているのだという、1号車を経営するシューゴもそれに見習ってここ最近はよくカメラを持ち出して笑顔の写真をたくさん撮らせて貰っているとの事。
その中でも自分の料理を食べて「美味しい」と言いながらお客さん達が見せてくれた笑顔が印象に残っていた時に渚は仲間を呼んだり、時には一緒に写真に写る事を心に決めていて兄が見せたのはその中の1枚を焼き増しして結愛や兄弟に渡した物だった様だ。
渚(当時)「私が撮ったこんな古い写真・・・、大切に持っていてくれたんだね・・・。」
写真の右下に刻まれていた日付を見て思い出の古さを実感する渚、「まさかの再会」が改めて嬉しくなるきっかけになった様だ。
ミル(当時)「渚さんは・・・、俺達の事忘れていたの?」
確かに先程の様子からは渚が2人の事を覚えていなかった様に思える、しかし「2人との思い出」を全て忘れていた訳では無かった様だ。
渚(当時)「そんな訳・・・、そうだ!!ちょっと待ってくれるかい?」
渚はそこにいた者全員に向かってその場から離れる様に伝えると駐車場の空きスペースに『転送』を使って自らが所有する屋台の2号車を出現させた、「何となく社長が後でごちゃごちゃ言ってきそうだけど大丈夫だろう」と気にしていなかった様だ。
カラン(当時)「これ・・・。」
ミル(当時)「あの時の屋台だ、全く変わってない・・・。」
以前見た時から全く変わっていない屋台を久々に見た兄弟は微かな渚との思い出をより一層思い出して目を輝かしていた、もしかすると渚が何度も修理に出しながら車両を買い替える事無く屋台を営業していたのはその為なのかも知れない。
渚(当時)「いや、ただただ買い換える金が無かっただけさ。」
ちゃうんかい、良い雰囲気にさせといて何やねん・・・!!
渚(当時)「取り敢えずほら2人共、ここを見てくれるかい?」
2号車の厨房部分を開けて2人を案内する渚、指し示した先にはカランが先程見せた物と同じ写真があった。写真の中でも3人共屈託のない笑顔を見せていた、渚自身「これ程に「屋台をしていて良かった」と言える思い出は無いと言っても過言では無かった」という。
ミル(当時)「大切にしていてくれたんだね、会いに来た甲斐があったよ。」
渚(当時)「私もだよ、2人共会いに来てくれてありがとうね。」
ただ先程から聞き忘れていた質問があった様な・・・、まぁ俺が気にする事でも無いか。
光(当時)「ねぇ、そう言えば2人が今何をしているかを聞こうとしていたんじゃないの?」
渚(当時)「そうだったね、こうやって会いに来てくれているという事はそれなりに立派な大人に育ったって事なんだろう?」
渚は2人が今何をしているのか、どうやって「あの時」の食事代を稼いで来てくれたのかが気になって仕方が無かった。
カラン(当時)「俺達さ・・・。」
カランが語り出そうとした時、渚のスマホに着信があった。画面を見てみるとそこにはダンラルタ王国の国王である「デカルト」の文字が(『念話』ちゃうんかい)、新店のオーナーを任される事が決まってから大臣の様子を伺ったり経営に関するアドバイスを求める為にちょこちょこ連絡を取り合っているとの事。
渚(当時)「デカルトさんじゃないか、どうしたんだい・・・?確かにそうだけど・・・、あらまそうなの?それは良い事を聞いたね、分かった。いや何でも無いよ、気にしないでおくれ。あんたって王様の癖に寂しがり屋だね、じゃあまた今度連絡するから待ってな。」
早々に電話を切った渚は改まったかのように2人の方へと振り向いた。
渚(当時)「あんた達・・・、立派になったもんだね。あたしゃ尊敬しちゃうよ。」
だから2人は何をしてんだよ!!




