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結愛はちょっと探りを入れてみる事に
-485 調子が良いのか悪いのか-
ため息の止まらない貝塚財閥代表取締役社長は秘書を連れて「お風呂山」の頂上にある駐車場へと『瞬間移動』すると聞き耳を立てる為にすぐ傍の物陰に隠れた、別にそこまでしなくても渚の事を『探知』すればよかったのでは無いかと思ってしまうのだがどうやらそれ所では無い状況になってしまっている様だ。
ヒドゥラ(当時)「結ちゃん、やっぱり私とイチャイチャしたかったのかしら?こんな所に隠れなくても女同士なんだから良いじゃ無いの。」
口調から見るにヒドゥラは珍しく酔っているらしい、まぁこういう時くらいは構わないかな。
結愛(当時)「馬鹿、ただここが狭いだけだろうがよ!!それに蛇と絡みたい人間が何処にいるってんだ!!」
ヒドゥラ(当時)「じゃあ逆に私が絡めば良いって事かしら、蛇だけに。」
正直言って全くもって上手くは無い。
結愛が何となくだが色んな意味で寒さを感じ始める中、駐車場の空きスペースでは渚が腕を組んで誰かと話していた。この日参加している走り屋達の監督をしているのだろうか。
渚(当時)「今日はやけに走り屋が多いね、これじゃゆっくり走れないじゃ無いか。」
何も知らなかったみたいだ、ただ結愛の目線から何処をどう見ても愛車のエボⅢが見当たらないとは一体どうして・・・。
女性「お母さんったら・・・、今エボⅢは修理中でしょ。」
何て事だ、今はオイル漏れとなってしまっている車を珠洲田自動車へと修理に出していると言うのに「走りに来た」とは・・・。
結愛(当時)「あれは・・・、光さんか?」
この日はダルラン光を連れて母娘で走りに来ているみたいだ、何気に元の世界にいた時以来では無かったか・・・。
光(当時)「「ゆっくり走る」って言ってたけど・・・、まさか私の車で走る気?あの子最近ペイントしなおしたばっかりなのよ。」
渚(当時)「良いじゃ無いか、折角の車なんだから走らせないと宝の持ち腐れになっちゃうよ。それにあの車を買ったのは私なんだから構わないだろ。」
確かに否定は出来ない、光にとってこのカフェラッテは元の世界で渚を亡くした時の形見だったからだ。
渚(当時)「それにしても何でオレンジ色なんかに?折角綺麗な真紅の奴を買ってやったというのに。」
光(当時)「正直飽きてたのよ、それにアイデンティティを大切にして何が悪いっての?」
渚(当時)「別に「悪い」とは言って無いだろ、ただエボⅢとお揃いの色で個人的に気に入ってただけなんだよ。でも良いか、あんたの車だからあんたの自由にするのが1番さね。」
光(当時)「母さんがそう言ってくれて助かるよ、でも今夜は走らないからね?」
渚(当時)「チェッ・・・、偶には小さい車の小回りの良さを感じようと思っていたけど仕方が無いか。」
そんな中、2人に近付く男性が1名。
男性「渚さん、お久しぶりです。」
渚(当時)「あら、林田ちゃんの所の利ちゃんじゃないか。巡回でもしてたのかい?」
そう、声をかけて来たのはネフェテルサ王国警察の警部でハーフ・ドワーフの林田利通であった。2人は利通の父で署長の希を介して知り合ったとの事、今では偶に呑む事もあったりなかったり。
利通(当時)「いえいえ、今日は1人の走り屋として来ただけですよ。」
渚(当時)「皮肉なもんだね、普段は交通違反を取り締まる側の者が今日は堂々と走り屋行為ってかい?」
利通(当時)「公私混同は決してしない主義なんです、別に良いじゃ無いですか。」
渚(当時)「何言ってんのさ、毎日昼休みの度にドーラちゃんとランチしている事を私が知らないとでも思ったのかい?」
利通(当時)「勘弁して下さいよ、何でもしますから・・・。」
渚(当時)「言ったね、じゃあ車貸して!!」
光(当時)「お母さんったらもう・・・、調子が良いんだから・・・。」
言っておくけど、壊すなよ?




