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確か・・・、あんな思い出があった様な・・・
-483 禁句-
突然だが話は数日前に遡る、貝塚財閥代表取締役社長は秘書・ヒドゥラを連れて「偶には女同士の時間を過ごそう」と「お風呂山」に来ていた。
ヒドゥラ(当時)「結ちゃん、私なんかが一緒に来て良かったの?他に一緒に行きたい人がいたんじゃない?」
結愛(当時)「良いの良いの、普段出来ない様な話もしたくなるだろ。それより蛇って温泉に入っても大丈夫なのか?」
ヒドゥラ(当時)「何言ってんの、私達だってちょこちょこ水浴びとかすんのよ。」
そんな中、すぐ傍の公道では相も変わらず排気音が鳴り響いていた。『瞬間移動』を使えば何処にでもすぐに行けるこの世界でも貝塚財閥が3国間での道路工事を施してから普段使いは勿論、趣味として車に乗る人々が増えて来たと言う。
特に渚がダンラルタ王国の警察と王国軍の者達と協力して下級魔獣達の誘拐に加担していた犯人を追い回してからと言うもの、「赤鬼」に憧れて走り屋を目指す住民もいたりしたという(一応言っておくが勿論良心的な)。
さて、話を戻そうか。
多種多様の排気音が響き渡る中、結愛はひときわ目立つ音を耳にして「何となく聞き覚えがある様な無い様な」という気がしてならなかった。
ヒドゥラ(当時)「何なのよあんた、そんなにずっと考え込んでいたら湯冷めしちゃうでしょ。」
とても社長秘書(というより部下)からの言葉とは思えない、というより変温動物である蛇に「湯冷め」という概念がある方に驚かされる。
結愛(当時)「いや・・・、何となくな・・・。」
ヒドゥラ(当時)「「何となく」・・・、何なのよ・・・。」
ビール片手に結愛が頭を悩ませていると2人の目の前で一際目立っている排気音の正体と言えるスポーツカーが1台、ロータリーエンジンを搭載している事で有名な「あの車」がドリフトで通り過ぎた(と言うか呑んどったんかい)。
結愛(当時)「おば様・・・。」
やはり社長の記憶は正しかった様だ、聞き覚えのある排気音の正体は「筆頭株主(おば様)」こと宝田真希子(通称「紫武者」)だったのだ。
ヒドゥラ(当時)「改めて思うけど、おば様って活発な方よね?本人には悪いけど・・・、歳を感じさせないと言うか。」
筆頭株主が偶々見かけた2人(いや1人と1体)の事を『察知』していたらどうなっていたんだろうか、と言うかヒドゥラも「おば様」って呼んでんだな。
結愛(当時)「ヒドゥ、ヒヤヒヤさせるような事を言ってんじゃねぇよ。俺だって言わない様にしているんだから。」
あらまぁ、あんたも思ってたのね。俺、知~らない。
ヒドゥラ(当時)「だってそうじゃない、あの歳でLX-7(あんなデカい車)を乗りこなすなんて私には真似できないわよ。」
改めて言う事では無いがこの世界へと転生して来た日本人達が歳を取る事では無い、しかし女性に対して年齢の話をするのは流石にタブーなのではなかろうか。
結愛(当時)「それにしても今夜何かあるのかな、普段に比べて走り屋達の車が多い様な気がするんだけど・・・。」
普段「お風呂山」の公道を攻めている車は多くて5~6台なのだがこの日は少なくとも20台程を見かけた様な・・・、「何があったと言うのだろうか」と思った2人は一先ずすぐ傍にいた旅館の女将であるアーク・エルフのルイズに聞いてみる事にしたのだが日本でもよくあるベタな問題が1つ浮上してしまった。
結愛(当時)「おばちゃーん、今日何かあるの?」
ルイズ(当時)「「お姉さん(若しくは女将さん)」でしょうが、これでもまだ300歳行って無いんだから!!全くもう・・・、社長さんともあろう人が失礼しちゃうわ。」
「まだ300歳行ってない」から「お姉さん」って・・・、エルフを含めた長命種の感覚は未だ理解に苦しむ(というか分かりたくもない)。
すいません、失礼しました




