㊽
目的を達成しようと必死になっていたセリー。
-㊽ 誇りに思って良いんだ、そして変わらないんだ-
女性の姿で松戸夫婦の前に現れた古龍は、額に汗を滲ませながら2人の前に現れた。
女性(映像)「大変失礼致しました、私セリー・ラルーという者です。実は美麗さんからお預かりしている物がありまして。」
セリーは先程の髪留めを王麗に手渡した。
龍太郎(映像)「これ・・・。」
王麗(映像)「間違いないよ、私があの子にあげたやつだ。どうして貴女がこれを?!あの子はどうしているんです?!」
セリー(映像)「ご安心ください、美麗さんは好美さん達と同じ世界で元気でいますよ。」
龍太郎(映像)「という事は、娘は寂しい想いをしなくて良いんですね?」
セリー(映像)「はい、そして皆様に幸せに暮らして欲しいと仰っていました。」
女神の言葉を聞いた王麗は、涙を流しながら笑っていた。
王麗(映像)「バカだね・・・、あんた無しでどう幸せになれってんだい・・・。」
美麗は映像に映る母親につられる様に涙を流していた、自分が死んだ事により両親を悲しませてしまった事を何よりも悔いていたからだ。
美麗「好美・・・、私って大罪人だね。親不孝者だね!!どうやって謝罪すべきだと思う?!」
好美「どうして謝罪する必要がある訳?!あんたは勇敢な姿と共に亡くなった訳でしょ?!さっき女将さんだって誇りに思っている様に言ってたじゃん!!本当は時運が行くべきだったのにって言ってたじゃん!!」
美麗「じゃあ私はこの世界で堂々としていたらいいのかな?」
好美「当たり前でしょ?!堂々と生きて欲しいって意味でこの世界に送られたと思うよ!!気になるなら神様に聞いてみなよ!!」
美麗「どうやって聞くの?!セリーさんはあっちの世界に行っちゃったじゃん!!」
確かに美麗が言っている事は間違っていない、その言葉に好美は頭を悩ましていた。確かにセリーは好美達が元々いた世界にいる上にビクターは(多分)まだパチンコ屋だ、両方共声が届くような状況だとは言えない。
好美「大丈夫だから、安心してよ。」
美麗「どうするつもり?!」
好美は懐から携帯を取り出して電話をかけた。
好美「ねぇ、今から来れない?場所?私の家だよ・・・。あれ?来た事あったでしょ・・・。分かったけど・・・、今午前中だから家にいるんだよね・・・、じゃあ迎えに行くからね。え?何もしなくて良いの?じゃあ、このまま待ってたらいいのね?何?!ビール2ケース?!無茶言わないでよ!!もう・・・、分かったよ。買って来るから待ってて!!」
美麗は目の前で繰り広げられる異世界らしくない会話に呆然としていた。
美麗「ねぇ好美、誰に電話したの?というかこの世界ってスマホ使えんの?」
好美「多分説明してたら日が暮れちゃうから後でも良いかな?一先ずビール買って来るから守と呑んでて。」
次の瞬間、好美は『瞬間移動』で何処かへと行ってしまった。
美麗「好美?!好美?!何処に行ったの?!守君!!好美が消えちゃった!!」
守「安心して良いよ、さっき好美が言った通りビールを買いに行っただけだと思うから。」
美麗「何?皆も魔法が使える訳?」
守「どう言えば良いんだろ・・・、いずれは美麗も使える様になると思うから。」
次の瞬間、好美がテラスに戻って来た。ただドジを踏んでしまった様で・・・。
好美「やっちゃったー!!びしょびしょだよー!!守、引っ張って!!」
守はプールに落ちて泣きわめく恋人の腕を掴んで引きながらため息をついた。
守「おいおい、『瞬間移動』をミスする奴なんているのか?」
好美「少し前まで全然知らなかった守に言われたくないもん!!」
守「す・・・、すんません・・・。」
美麗「2人ったら、この世界でも相変わらずその調子なんだね。」
元の世界と変わらない光景を見て安心した美麗はクスクスと笑っていた。
何だか楽しくなって来た美麗。