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汗が止まらない結愛
-481 楽しみはちゃんと取っておこうよ-
結愛が日頃から密かに貯めていたお小遣いを使って買ったサーロイン、言ってしまえば自腹で購入したものの値段を好美が知らなかったので大赤字の商品にしてしまったが故に社長は鉄板に小さな雫を落としていた(「仕方ない」と言えば仕方ないのだが決してやっちゃ駄目なやつである)。
結愛「好美・・・、責めて黒字になる様にしてくれよ・・・!!これ高かったんだぞ!!」
結愛の嘆きも虚しく、相も変わらずケロッとした表情をしていた好美は先程と同じ値段でサーロインステーキを売り続けていた。しかしそれもじきに終わるはずである、貝塚財閥代表取締役社長の「自分へのご褒美」はもう跡形も無くなっていたからだ(可哀想な結愛)。
真希子「結ちゃん、あんたそのお肉を『複製』していなかったのかい?」
確かに筆頭株主(おば様)の言った通りだ、どんな物でも『複製』してしまえば何度だって使える(楽しめる)はずだ。ネクロマンサーはその事を完全に忘れてしまっていたのだろうか、まぁ「社長さん」って忙しい人だからそれも仕方ないのかも知れない(ある意味可哀想な結愛)。
結愛「おば様・・・、違うんですよ。やっと手に入れた貴重な物だから「大切に食べよう」と思って敢えて『複製』しなかったんです、その方が味をより一層楽しめると思いまして。」
それもそうだ、世の中には「儚いので美しい」と言える物が多く存在する(例えば大輪の花火の様に)。それはきっと今回使用した高級なサーロインにも言える事では無いだろうか、「ちょっとだから美味しいと感じる」という考えに俺自身は決して反対しない(「逆にむつこくなってしまうのでちょっとで良い」という意見もあったりなかったり)。もしも『複製』を使用して繰り返して食べているとどんなに美味な物でも飽きと言うものがやってくる、きっと結愛はその事を考慮していたのだ。
真希子「そうかい、私だったらすぐに『複製』しちゃうけどね。」
結愛「しても良かったんですが希少性が無くなるといけないのでやめたんですよ、「ご褒美」っていつでも出来る事だとそれまで頑張ろうって気持ちが無くなってしまうじゃ無いですか。「なかなか出来ない事だから次までまた頑張ろう」って気持ちにさせてくれる物であって欲しかったんです、決して「よく頑張った」で終わらせたくは無いと思ったんで。」
真希子「良い事言うじゃ無いか、それでこそ社長(いや人間)のあるべき姿だよ。誰だって「ご褒美」が無いと頑張れる物も頑張れないからね、でもね・・・。」
結愛「「でもね」って・・・、どうしたんです?えっと・・・、まさか・・・。」
真希子「その「まさか」だよ、あの子やっちゃってるね。」
真希子の指し示した方向へと恐る恐る振り向く結愛、そう社長の深い話(?)を全くもって聞いていなかった人物が約1名。
好美「まだまだ沢山あるのでどんどんご注文下さい、今回は貝塚財閥の利益還元祭ですから大盤振る舞いしちゃいますよ!!」
結愛の知らぬところで「貴重なサーロイン」を大量に『複製』していた好美、本人の名誉の為に言っておくが好美は「ボケに回っているだけ」で決して悪役では無い事を御了承頂きたい(と言うより一応主人公の1人なんだが)。
結愛「おい、いつ俺が「貝塚財閥の利益還元祭」なんて言ったんだよ!!いくらボケでも金がかかり過ぎているだろうが、俺の小遣い返せよ!!」
先程自分が言った理由があったので必死に止めようとしていたがよく考えてみれば間違っていたのは社長本人だったのかも知れない(いやそれは無いか)、ただ結愛の「間違い(?)」に気付いていた上級人魚はお客さんに聞こえない様に一先ず小声で言ってみる事に(今の状態の結愛が素直に聞くとは思えないんだが取り敢えず肩を優しく「ぽんぽん」した)。
ピューア「結ちゃん、耳貸して。(小声)よく考えてよ、『複製』で作った物に関してはタダで手に入ったと同じなんだから売った金額が全て利益になるんじゃない?」
結愛「本当だ、完全に忘れてた・・・。それもそうだな!!」
「やっとそこに気付いてくれたみたいだから落ち着いて商売が出来る」と胸を撫で下ろすピューア、その上好美はちゃんと結愛の心中を考慮していたみたいだ。
好美「あのさ・・・、今焼いてるのって全部『複製』した物だよね。実はほら、この通り。」
好美は『アイテムボックス』から結愛の「自分へのご褒美」を取り出して見せた、そう、こうなる事が分かっていたので寸前に『複製』した物とすり替えて対策していたのだ。
ちゃんとしてたのね
 




