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折角株主になったのに・・・
-478 反省と感謝-
筆頭株主(おば様)により貝塚財閥に関する発言権をある程度手に入れていた上級人魚、しかし「テレビでも見ない日は無い位に活躍している友人に会社に対して自分が意見をしてもいいのだろうか」と心中で遠慮していたそうだ。
結愛「ピューったら・・・、言ってくれても良いじゃねぇか。まぁ・・・、別に俺は誰が株を所有しようが関係なく会社を動かして行くつもりだから良いんだけどよ。」
株主の発言が会社に大きな影響を与えるというのはきっとどこの会社においても一緒と言っても良いだろう(寧ろそれが常識だと言っても過言では無い)、それを知っているはずの結愛が「関係なく」と言うのはどうかと思ってしまう。社長の言葉を決して聞き逃さなかった真希子は地道に生地を混ぜながら結愛に待ったをかけた、流石に筆頭株主として黙っている訳にはいかなかった様だ。
真希子「結ちゃん、それは違うよ。あんたの会社はあんただけの力で動いている訳じゃ無いんだ、多くの社員があんたを信じてついて来てくれているから今があるってちゃんと分かっておかなきゃいけないよ、それに会社ってのは株を買ってもらう事で動かす為の資金を手にしているって事を忘れてはいけないんだ。全くもって「関係なく」は無いんだって事をちゃんと理解しておくべきじゃ無いのかい?」
真希子の言った通りだ、会社でも個人でも同様に言える事だが何をするにも金は必要だ。きっと今の結愛に必要なのはプラスティック容器では無く「反省」の2文字だろう、株主や住民あっての貝塚財閥だという事を忘れていては大切にしている「信用・信頼」を一瞬にして無くしかねない。
何も言い返せなかった結愛は自分の発言を反省していた、鉄板の上で動かしていたコテの速度が落ちていたのが何よりに証拠だ。その事を1番に理解していたのは隣で手伝っていたピューア本人であった、しかし今はそれ所では無いはずなのだが?
ピューア「結ちゃん、私の所為で怒られちゃったね。何か・・・、ごめんなさい。」
結愛「株主が何言ってんだよ、ただの社長である俺が無責任な発言をしたからじゃねぇか。「支えてくれている周りの人々に感謝しないといけない側の人間がして良い言動では決して無かった」、それだけだよ。」
何処か裏のありそうな笑みを浮かべる結愛、きっとまだ真希子の発言による重圧が抜け切れていないと推測できるがお客さんが待っているので手だけはしっかりと動かして欲しい(個人的に)。
ピューア「結愛・・・、反省しているのは分かったからちゃんと作業に戻ってよ。折角待ってくれているお客さんがいるのに焦がしちゃうでしょ、何もかもを台無しにしたいの?」
ニクシーの言った通りだ、真希子が練っている生地やマルウが追加で持って来た豚バラ肉に多くの農家が一生懸命育てた野菜があるから1枚の「豚玉」が完成する。それはある意味で「組織」と同じと言えるのではなかろうか、きっと今の結愛には「反省」と「感謝」が必要なのかも知れない。
結愛「そうだな・・・、俺1人で会社が出来ている訳じゃ無いって事を改めて認識しないとな。悪かったよ・・・、ありがとよ。」
ピューア「いや・・・、今は会社より豚玉なんだけど・・・。」
確かにそうだ、先程から結愛がずっと焼いていた豚玉は下手すれば真っ黒に焦げ付く寸前までになっていた。貝塚財閥代表取締役社長は思わず「危ねぇ!!」と叫びながらも、冷静に対処していた。冷静さを欠いてはどの様な事もしっかりと取り組めない、どうやらその事をちゃんと理解している様だ(偉い偉い)。
結愛「お待たせしました、お持ち帰り4人前ね。」
この日だけとは思われるが、この場に来たお客さん達のメインがトンカツでは無くお好み焼きになってしまっている事は言うまでも無い。それが故か、またまた問題(?)が浮上していた(騒がしいと言うか何と言うか)。
客「あの・・・、俺目玉焼き2個のトッピングを頼んでいたんですけど・・・。」
結愛「「目玉焼き2個」ですか・・・?!恐れ入りますが少々お待ち頂けますか?!」
メインとして販売していた豚玉自体に関して「トッピング(カスタム)」の事を何も聞いていなかった結愛、最初からいたはずの者が知らない所で何かあったのかも知れない。
客「えっと・・・、注文取ってくれてるあの人に頼んでいたはずなんですけど・・・。」
結愛「「あの人」ですか・・・、そう言えばさっきから注文が増えている様な気が・・・。」
結愛はお客さんが示した方向を見つめた、するとこの場にいるはずの無い「あの人」が・・・。
そう、自己中(?)な「あの人」




