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相手を気遣うのは誰しも大切にすべき事
-475 皆一緒だから忘れちゃえ-
2人がマルウに対して丁寧な口調で話していた理由はただ1つ、「この方が質問しやすいだろう」と思ったから、ただ誰にだって聞かれたくない事の1つや2つはあるはずなのでそう簡単に口を割ってくれるとは思えないからというのも理由の1つだったのだろう。今は気になっていた事をズバッと聞く訳では無く、「本人が話しやすい雰囲気を作るのが先決」だとある意味で母娘の様な関係である2人は共通して考えていた様だ。相手を気遣う姿勢は「信用・信頼」を何よりも大切にする貝塚財閥に最も必要な事では無かろうか、まぁ俺は社員でもないのでどうも言えないが。
真希子「えっと・・・、宜しければご一緒して行きませんか?折角遠方からお越し頂いていますし。」
「遠方から」とは言うがこの世界においては『瞬間移動』を使えばそんなの苦ではなくなってしまう、ましてや3国間が全て高速道路(っぽい道)で繋がっているので尚更だと思われるが今はツッコミを入れるのはやめておこう。
マルウ「いえいえ、これもある意味では妻としての役目ですから。」
「夫を支える」という意味で「妻の役目」という言葉を使ったと思われるが今現在夫は豚舎の前で恋人達に巻き込まれているだけなので無意味な気がするが、よくよく考えてみれば事の発端は守と好美にあると言っても過言では無いので親である真希子が対応に追われるのも仕方が無い事なのかも知れない。
結愛「何か凄いですね、私も見習わなきゃいけないかも。ある意味でケデールさんが羨ましいです。」
「貝塚財閥代表取締役社長」としてではなく「1人と妻」としてマルウの事を尊敬するネクロマンサー、改めて「自分は光明の妻としてちゃんと夫婦生活を送れているのか」を考え直していたみたいだが目の前のウィッチがテレビを全く見ていなかったという可能性は全くもって浮上していない。
マルウ「そんな・・・、何を仰っているんですか。あんなに大きくて国民皆に慕われている会社を経営している方が小さな肉屋の店主の妻を「見習う」だなんて。」
結愛「いえいえ、それは大袈裟です。元々祖先が作った会社をくそ・・・、いや父から引き継いだだけですので。」
確かに祖父・博から貰った「貝塚財閥全権一週間強奪券」により無理矢理会社の全権を義弘(くそ親父)から奪い取り、緊急株主総会を経てそのまま社長へと就任したが教育支援等を中心に行う事で貝塚財閥が最も大切にしている「信用・信頼」を取り戻すことが出来たのは他でも無い結愛の努力の成果と言っても過言では無い。
真希子「それにこの子ったら家では本当にだらしのない子なんですよ、帰ったらすぐに酒盛りを始めるし夕飯と言えば毎晩毎晩カップ麺だし。」
結愛「おば様・・・、それは言わなくても良いでしょう。それに創造主まで・・・。」
真希子の(余計な?)一言と結愛のツッコミにより周囲のお客さんから笑いが起こっていた、きっと「この社長も私達と同様に庶民的な人なんだ」という安心感が生まれたからでは無いだろうか。これは決して悪い事だとは言えない、どちらかと言うと会社(いや結愛)にとっていい方に転がっていると言っても良い(何となく俺への態度が気になるが)。
マルウ「そうなんですか?では社長さんも私と同じような生活をされているんですね。」
真希子「まぁこの子の場合は「夫が手を焼いている」という言葉を付け加えても良いかも知れませんがね、他の誰とも変わらないんで大袈裟に言わなくても良いですよ。」
結愛「おば様・・・、そこまで言わなくても良いじゃ無いですか!!」
顔を赤くして恥ずかしがる社長、ただ筆頭株主の言葉を否定している訳ではないので「真希子が言った事は事実なんだろうな」と推測出来る。
2人の様子を見て安心したマルウは空いているボウルに材料を入れてかき混ぜ始めた、どうやらこの場にいるのが楽しくなって来たらしい。
真希子「マルウさん・・・、良いんですか?」
マルウ「勿論です、私も参加させて下さい。それにずっと店(と言うより事務室)に籠りっぱなしなので偶にはこうやって外でのびのびと過ごしたくなるんですよ、丁度良い機会ですから今日は仕事(と言うより旦那)の事を忘れて楽しく過ごそうと思います。」
結愛「そう来なくっちゃ、では鉄板も温まってきたみたいなのでどんどん焼いていきますかね。」
先程から鉄板はずっと温まっていたのだが今は言わないのが無難だろう、ただ2人がマルウをこの場に呼び止めた理由を完全に忘れている様な気がするのは俺だけだろうか。まぁ楽しそうにしているし、話が順調に(?)進みそうなので良しとするか。
良い・・・、のか・・・?




