㊼
セリーはどうやって願いを叶えようとしているのか。
-㊼ 親子と龍-
美麗の願いを聞き入れたセリーは、もう一度人の姿に戻り地上へと降り立った。
セリー「1つ、お聞きしたい事があるのですが。」
神に改めて何を聞かれるだろうかと身構えていた美麗、意外にも古龍が尋ねたのはまるでウェデイングプランナーがよく聞くようなものだった。
セリー「ご両親との思い出の品はございますか?」
美麗「思い出の品ですか・・・、これかな。」
美麗は好美と出逢った時から肌身離さず大切に使っていた古い髪留めを頭から外してセリーに渡した。
好美「それって・・・。」
美麗「これね、高校に入る前私が店を手伝う様になった時にママがくれた物なの。」
美麗はこう語っていた、当時から髪の長かった本人がそのまま手伝いに入ろうとしたのを見た王麗は呆れ顔をしながら娘を裏へと呼び出した。
王麗(当時)「あんたも世話の焼ける子だね、うち飲食業だよ?ほら、これ使いな。」
そう言って渡された髪留めを、美麗はずっと大切に使っていた。きっと教訓の証として残してあったのだろう。
セリー「お預かりしても宜しいでしょうか?」
美麗「どうするんですか?」
セリー「まぁ、見ててください。」
セリーは美麗に向かって微笑むと、再び龍の姿に戻り飛び立った。
数分後、映像では美麗の火葬の時が迫っていた。
王麗(映像)「これで、この子の顔を見るのも最後なんだね。」
大粒の涙を流す妻の肩に手をやった龍太郎、大切な娘の死にずっとその手が震えていた。
龍太郎(映像)「ああ・・・、天国で幸せになってくれると良いな。」
棺桶に火が点けられてから数秒後、涙を堪えきれない王麗はその場から離れる事にした。
王麗(映像)「ちょっと、外の空気を吸ってくるよ。」
龍太郎(映像)「ああ、そうすると良い。俺も行こう。」
夫婦は火葬場の外へ出て空を見上げていた、人気も無くとても静かでただ煙突から煙がでているだけだった。
王麗(映像)「あの煙の様に、美麗も逝っちゃったんだね。向こうってどんな所なんだろね。」
龍太郎(映像)「さぁな、あいつしか分からない事だ。」
それから暫くして、2人の目には遠くから何かが迫って来ているのが映っていた。
王麗(映像)「あれは何だい、飛行機かい?それにしてはえらく低飛行だね。」
ずっと眺めていたかったが、そういう訳にはいかなかった。ゆっくりとだが2人の元に近付いてきている事に気付いた2人は、火葬場の前でただただ驚愕していた。
龍太郎(映像)「あれは・・・、龍か?!初めて見たぞ!!」
王麗(映像)「父ちゃん、それ所じゃ無いみたいだよ!!早く逃げた方が良いって!!」
2人が建物内に逃げ込もうとした事に気付いたのか、龍のいる方向から女性の声が。
女性(映像)「お待ちください!!私の話を聞いて下さい!!」
龍太郎(映像)「おいおい、喋りやがったぞ。俺は頭がおかしくなっちゃったのか?!」
王麗(映像)「父ちゃん、あれ、私達に言ってんじゃないかい?」
夫婦がその場で立ち止まっていると、龍は猛スピードで2人と近付き急上昇した。
王麗(映像)「どうなってんだい、自分の話を聞けと言う割には何処か行っちゃったけど。」
それから様子を見ていると、空から女性が降りて来た。声は先程の龍と同じだった。
女神との遭遇は良い方向へと向かうのだろうか。