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早く料理しようって・・・
-463 ちゃんと-
まさかこの期に及んで結愛がボケに走るとは思いもしなかったが作業(いや話)自体がしっかりと進捗してくれさえすれば俺は気にする必要はないと思う、ただ「何でもあり」であるこの世界ではどの様な時でも一筋縄ではいかないのが定番と言うか何と言うか(正直困ったもんだ)。
ピューア「本当はどうなの?往年のギャグをかましていた裏で実はちゃんとアイデアを考えていたんじゃ無いの?」
結愛「いや・・・、本当に寝ちまっててさ・・・。何も思い浮かばなくて。」
ピューア「あんた勘弁してよ、こんな事で時間食うの嫌なんだけど。」
何となくこの2人って相性がいい様に思えるんだよな(と言っても1人は人間ではないのだが今は気にしないでおこう)、名前が「結愛」と「ピューア」で似ているからか(全く関係無いって)?と言うか何で異世界の上級人魚が日本の名作や往年のギャグを知ってんだよ・・・(大人の事情があるのでこれ以上は言えません)。
真希子「結ちゃん、大企業の社長がそんな調子でどうするんだい。あんたの所の株を売る決意をしないといけないかもね。」
結愛「おば様、勘弁して下さいよ!!」
何となくついさっき使い始めた「結ちゃん」という呼び方が結愛本人にもいつの間にか定着締まっている筆頭株主、ただいくら何でも冗談がきつ過ぎやしないだろうか。
真希子「そう思うなら早くアイデアを搾り出しなさい、まさかと思うけどあんたがアイデアを搾り出すまでの件をずっと引っ張るつもりかい?」
結愛「それは無いです、ちゃんと考えますから!!」
真希子「あんた、本当だね?」
真希子による少しドスの利いた声の前では流石に「アレ」を出す訳にはいかないだろうという雰囲気だ、頼むから「やるなよ」?
結愛「ほへ?」
俺が振った時には既に両手の人差し指を頭の付近へと持って行っていた結愛、ここは「流石」と言うべきか「馬鹿か」と言うべきか・・・。
ただそれから数秒程経過した後、今回はちゃんと思い浮かんだ様だ(何処かから「チーン」という鉦の音が聞こえた気もした様なしなかった様な)。
ピューア「あんた、今回は大丈夫なんだろうね?」
結愛「問題ねぇよ、今回はきっと大丈夫だ。」
真希子「ほぅ・・・、随分引っ張ってくれた分は良いアイデアなんだろうね?」
真希子の言葉には未だ圧を感じるが今回は相当な自信がある様で、貝塚財閥代表取締役社長の目は自信に満ち溢れていた。
そんな結愛は出来上がった豚バラ肉の薄切りを一先ず大きく切れた物と小さくなった物とで分け始めた、豚玉の分が足らなくならないかが心配だが今は何も言わないでおこう。
ピューア「綺麗に分別できたみたいだけど・・・、それでどうする訳?」
結愛「こっからが大切だ、まぁ見てなって。」
そう言った社長は鉄板に豚の脂を追加した後に小さめの『火球』で焚火を強くしていた(そこは魔法(というか能力)を使うんだな)、それから先程の豚バラ(小)と『アイテムボックス』から笊にいっぱい入ったある野菜を取り出して一緒に炒めだした。
真希子「結ちゃん、あんた社長の癖に何でそんなに大量のモヤシなんて持っているんだい?」
ピューア「その上袋に入ったままじゃ無くて何で笊に?」
結愛「実はな・・・、最近モヤシの芽と根を取りながら仕事の事を考える事が多くてよ。「塵も積もれば山となる」と奴だ、やる度に鮮度の事を考慮して『アイテムボックス』で保管してたらこうなっちまったんだよ。」
真希子「あんたもそういう時あるんだね、ちゃんとした1人の人間だったって訳だ。」
結愛「おば様・・・、それどういう意味ですか!!」
今度はツッコミに転じたみたいだが「ちょっと待てい!!」と言いたくなる者が約1名、その場には人間以外もいるんだから仕方が無いか。
ピューア「師匠、人魚(私達)だってちゃんと真摯に物事を考える時はあるんですから!!」
真希子「気を悪くしたみたいなら悪かったね、ただそういうつもりでは無かったんだよ。」
あらら・・・、平和な世界と言いたいがその如意菜多過ぎねぇか?
いや、まさかな・・・。




