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お客さんも俺と同じ気持ちだった様だ
-459 無知な有名人-
メインをずっと待っていた数名のお客さん達が「これはいつまで経っても出来上がらないだろう」とその場を離れて店内へと入って行くのを「致し方ない」と思いながら見送ったピューアは「せめてまだ信じて待ってくれている方々の為にも」と前菜の用意を急いでいた、この世界に来てからテレビの取材などにより有名人となった結愛の力もあったので正直言って助かっていたのが否定できない。
結愛「ああ・・、どうもどうも、有難い限りです!!私なんかと一緒に写真ですか?喜んで御受け致しますよ、是非SNSにアップする際は私のアカウントをタグ付けして下さいね。」
代表取締役社長として貝塚財閥のイメージアップをする為に笑顔で対応する結愛、いつものキャラを捨てて「大人モード」で対応しているのもきっとその為だろう。
ピューア「あの子もすっかりビジネスマンしてるわね、私も負ける訳にはいかないわ。」
「一体結愛の何を知っているんだ」とツッコミを入れたくなる一言だが今はやめておくのが得策か、そうでないと話が進まない(と言うより何時まで経ってもお好み焼きが出来上がらない)。
結愛「ピュー、呑気な事言ってないで早く作ってくれよ。結構大変なんだぞ?」
ピューア「何言ってんのよ、嬉しい悩みじゃ無いの。それに何もしていなかったあんたよりマシだって。」
結愛「おいおい、それを言うなって~・・・。あ、何でも無いんです。握手ですか?あら・・・、ありがとうございます。」
やはり結愛無しではこの世界は成り立たない、「一家に一台、貝塚結愛」とも言い出した住民も出て来始めたので尚更では無かろうか。
結愛「アホか、それはお前だろうがよ。」
えっと・・・、何の事かな・・・(口笛)。
結愛「誤魔化そうとしているのが見え見えだっつうの(しつこい様ですが実際は見えていません)、まぁ今に始まった事じゃねぇから気にしても仕方ないか。」
ピューア「結愛、申し訳ないけどちょっとこっちに来てもらえる?」
結愛「別に構わねぇよ、ちょっと待っててくれ。」
写真撮影を求めて来ていたお客さん達が途切れた所だったので丁度良かった様だ、最後にエルフの子供達との撮影を終えると鉄板の方へと近づいて行った。
結愛「お待たせ、どうかしたか?」
ピューア「そろそろ焼いて貰っても良い?私はもうちょっとだけ生地を混ぜているから。」
結愛「お安い御用だ、任せておけって。」
上手にひっくり返して住民との交流と更なるイメージアップを図った結愛、しかし肉の加工が得意なのは知っていたがお好み焼きについては全くもって知らない様な・・・。
ピューア「じゃあこれからお願いね。」
こう言った上級人魚から手渡されたボウルの中の生地を見て結愛は空いた口が塞がらなかった、いくら何でも大袈裟過ぎる様な気がするんだが?
結愛「ピュー、これ何だよ!!葱しか入ってねぇじゃんか!!」
ピューア「そりゃそうよ、葱焼きだもん。まさかあんた知らないの?」
結愛「い、いや・・・。そんな訳ねぇじゃねぇか、葱焼き俺も好きだぜ(口笛)?」
正に「図星」という言葉が似合う状況と言える、まさか異世界で日本の物を知らないのと言われる日が来るとは思いもしなかった社長。
そしてついでと言っては何だが、結愛に対して実は先日師匠の真希子に教えて貰うまで葱焼きを知らなかったというピューア。「五十歩百歩」ってこういう事なのかも知れない。
ピューア「あんた・・・、そう言えば広島焼きだけがお好み焼きだと思っていたらしいじゃない。ちゃんとこういうのもあるって事を知っておきなさい。」
結愛「うう・・・、どうも言えないやつだ・・・。でもちゃんとひっくり返せたらこの状況も変わってくるかも知れねぇな。」
そうそう、しっかりと作って雰囲気を良い物にしないとね。
そうこうしている内に鉄板が大分熱くなって来た、いよいよ試合開始だ。
結愛「よっしゃ・・・、やりますかね。」
やっとか・・・
 




