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お好み焼き、いつ出来るの?
-457 結構な時間が経過したが-
上級人魚の言った事は「多分」では無かった、結愛は鶏皮を集めて鶏油を作ろうとしていた様だがどちらかと言うと中華料理の隠し味にしたりコクを加える為に使用するのでそれでは豚の脂同様にくどくなってしまうのではと思ってしまう(傍らから見ていて何も言わなかった俺も人の事を言えないが)。
メラルーク「なぁ、やっぱりサラダ油とかキャノーラ油を使った方が良いと思うんだけど?」
長年トンカツ屋を経営しているが故に油の扱いに長けている半魚人は「少し余計だったか」と内心抵抗しながらアドバイスをした、しかし先程調理場に油の余分が無いと言ったのは本人だった様な・・・。
ピューア「お父さん・・・、「無い物を使え」って言われても無理な話よ。油が無いからどうしようか悩んでいるんじゃない。」
メラルーク「そうだったな、悪い・・・。」
先程の台詞を完全に忘れてしまっていた事を反省した父親、やはりこういった時に「女は強い」という事を実感させられてしまう(違っていたらごめんなさいね)。
ピューア「やっぱりロースの脂で何とかするしかないのかな、どうしよう・・・。」
転生者達を中心に言える事なのだが日本(元の世界)にいる訳では無いので『作成』で作ったり『瞬間移動』で仕入れに行けば良いじゃ無いかと肩を落としそうになる、きっとこの事を「全知全能の神」であるビクター・ラルーが知ったらどう言うんだろう。
メラルーク「そんなに悩んでいたならなんだけど・・・。」
ピューア「何々?」
調理場の隅でこそこそと娘に耳打ちする父親、俺自身は2人がお好み焼きについて話している事を知っているから良いが知らない人たちから怪しく見られても仕方が無い。
メラルークのアドバイスを聞いたピューアは豚ロースから削り取った脂と水を鍋に入れて中火にかけ始めた、どうやら豚の脂で調理をするつもりらしいが「真希子が承諾するかどうかが問題となってくるのではないか」と思う俺をよそに分離した脂やそぼろをふきんで濾した物を『冷却』で冷やして転生者達の元へと戻って来た。
結愛「お帰り、結構時間が掛かったんじゃねぇのか?」
貝塚財閥代表取締役社長が迎え入れた時、ニクシーの目からは先程と景色が変わっていない様に見えた(因みに真希子はお花を摘みに行ったとの事)。
ピューア「帰ってきたのは良いんだけどさ・・・、あんた今まで何してた訳?」
ピューアでなくともこう聞きたくなるのは致し方が無い、何処からどう見ても「何もしていなかっただろ」とツッコミを入れたくなる状況だったからだ。
結愛「ひ・・・、火の番をしていたんだよ。「焼き芋美味そうだな」と思いながらな。」
ピューア「いやあんた、何処に芋があるってのよ。」
どうやら最後の一言は完全に余計だった様だ、何処からどう見てもそこにはお好み焼きの生地と焚火しかない。
ピューア「あれ?豚肉はどうしたの?」
先程紫武者は「豚玉を作る」と言っていたが主役の姿どころか影すら見えない。
結愛「お前がなかなか帰って来ねぇから『アイテムボックス』に入れておいたんだよ、腐らせるよりマシだと思ってな。」
ピューア「何よ、あんたと違って何もしていなかった訳じゃ無いのよ。」
結愛が火をずっと眺めていた時、ニクシーが苦戦を強いられていたのは紛れもない事実。
結愛「いやいや、誰1人ここにいない状態にするとまずいだろうがよ。」
結愛の意見も決して否定は出来ない、しかし「何もしていなかった」という意味では「この野郎が」と言ってやりたくなってくる。
ピューア「まぁ良いか、一先ず焼きましょ?」
結愛「待てよ、その前に豚バラを切らないといけないだろうがよ。塊では料理出来んだろ?」
ピューア「いやあんた、その前に何で塊のままで保管してたのよ。」
先に切っておけよ・・・




