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忙しいのは良い事と言いますか・・・
-456 忘れてた-
今に始まった事では無いのだがすっかり時の人となってしまった女性社長が出現した事によりトンカツ屋の店内は通常の倍以上のお客さんでごった返していた、父親自身は「慣れているから大丈夫」だと言っていたが娘にとっては気がかりで仕方が無いので早くお好み焼きを仕上げて店内での作業に戻りたい一心であった様だ。
そんな中、結愛がじっくり時間をかけて思い出した鶏皮についてを聞きに来た上級人魚は大量のお客さんの対応に追われていた半魚人が自分で決めていたルールを破っていたので驚愕していた。メラルーク本人からすれば通常以上の売り上げを期待できるので喜ばしい事なのだが大丈夫なのだろうか、まぁ俺が心配する(と言うか余計な首を突っ込む)のは余計なのかも知れないな。
ピューア「仕方が無いよ、結愛と言えば今は暇みたいだから外でゆったりとしているけど普段は雑誌とかテレビの取材で引っ張りだこだもん。」
本人は知らない様だが結愛は決して暇では無い(どちらかと言うと今現在会社をサボっている)、ただずっと真希子の手伝い(?)をしているのでそう思われても仕方ない。
メラルーク「それで?外を手伝っていたのに急にどうした?」
父親の一言により調理場にやって来た目的を思い出した娘、と言うか忘れかけていたのかよこの野郎。
ピューア「そうそう、完全に忘れていたわ。」
おいおい、父親と俺のどちらに答えたのをハッキリせんかい(多分前者)。
ピューア「あのね、偶にお客さんの要望があった時鶏皮って外しているじゃない?」
おい、無視してんじゃねぇぞコラ。
メラルーク「ああ・・・、「脂っこい」って言うお客さんも少なからずいるから臨機応変に対応する様にしているんだけどそれがどうした?」
ピューア「それってさ・・・、前みたいに即座に捨てている訳?」
ピューアに質問されたメラルークは首を横に振った、どうやら長女が家を空けていた間に変化があった様だ(と言うかやっぱり俺の事は無視なんですね)。
ピューア「ん・・・?違うの・・・?」
メラルーク「ああ、実はちょっと前の事なんだが客足が落ち着いた時に偶然いたバイトのおやつ代わりにと思って鶏皮煎餅を出した事があったんだよ。その時は結構余っていたから正直どうしようか悩んでいたからな、試しにと言うか・・・。」
マーマンが言うには数名のバイトと自分のおやつ代わりとして出した鶏皮煎餅を目にしたお客さんが「あれを俺にもくれないか」と申し出て来たと言う、料理屋ではよくある話と言うか何と言うか。
メラルーク「それで出してみた時に「これを数種類の味付けで調理したら美味しいんじゃ無いか」と言われてね、今に至る訳。」
ピューア「そうなの?うちってそんなの売ってたっけ?」
調理場の隅で店内を見廻すピューア、そこには常に満席となっていたテーブルの数々と結愛が置いていた炊飯器などがあるだけでメラルークの言っていた「鶏皮煎餅」らしき物は見当たらなかった。
メラルーク「ほらあそこ・・・、ってあれ?」
店主が指差した先にあった籠の中はまさに「すっからかん」と言った状態。
ピューア「何も無いじゃない、補充するのを忘れていたの?」
メラルーク「そうだ・・・、ここ数日「鶏皮を外してくれ」と言ってくるお客さんがいなかったから作れていなかったんだよ。」
ピューア「そうか、ただ仕方が無いんじゃない?」
メラルーク「それで?鶏皮を使ってどうしようとしていたんだ?」
そう言えば目的を聞いていなかった気がするニクシー、しかし調理師としての経験と勘が物を言った様だ。
ピューア「多分なんだけど、「鶏油」を作ろうとしていたんじゃないかな。」
メラルーク「おいおい、そこは「多分」で大丈夫なのか?」
いや駄目でしょ




