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結愛危機一髪!!
-443 必死な結愛-
純粋無垢な子供による全くもって悪気の無い言葉につい焦りの表情を見せる貝塚財閥代表取締役社長は自らが経営する会社の全権を握る筆頭株主の方を見る事が出来ずにいた、流石にはっきり「ババア」と言った所を見られてしまったので「証人が現れてしまったからマズイ」という一言が脳内を駆け巡っていた。
真希子「結愛ちゃん、次の株主総会が楽しみだねぇ。」
結愛「おば様、何を仰っているんですか!!私は「ババロア」って言っただけですよ、おば様も甘い物がお好きでしょう?」
真希子「私は騙されやしないよ、その子が嘘をつくようには見えないからね。」
結愛「おば様、高校生の頃から公私両方でずっとお世話になっている貴女の悪口を言う訳無いでしょう!!」
真希子「じゃあどうしてそんなに焦っているのかな?」
結愛「何処が焦っているのですか、私はずっと落ち着いておりますよ!!」
何処からどう見ても落ち着いている様には見えない、ただ下手すれば長年かけて会社を大きくしてきた凄腕の社長が一瞬にして引き摺り下ろされかねない事態が発生しようとしている。
真希子「結愛ちゃん?さっきは貴女の為に出来もしないマジック(?)を披露してお客さんの目線を必死に逸らしていたのに恩を仇で返す様な事をしちゃ駄目でしょう?」
確かに真希子の言い分は間違ってはいない、しかし先程からずっと焦っている結愛に対して真希子が少し楽しそうにしている様に見えるのは気の所為だろうか。
結愛「私はそんなつもりなど少しもありません、お願いですから許して下さいよ!!」
自然と筆頭株主の前に跪く代表取締役社長、真希子は心中でこの光景を見てみたかったのではなかろうか。
望む光景を見る事が出来た真希子は満足したからか、声を上げて大爆笑し始めた(もしかして世に聞くドSって奴では無いのか)。
真希子「ハハハ・・・、結愛ちゃんったら必死になり過ぎだよ!!」
どうやら全てを知り尽くしていた真希子は元々結愛の事を許すつもりでいた様だ、平和に済んで良かった良かった・・・。
そんなこんなで先程マーマンからの連絡を受けた上級鳥獣人夫妻が持ち込んだ鉄板を利用して屋外での調理が始まったが真希子が作ろうとしている「あれ」とは何だったのだろうか、正直想像も付かないのだが・・・。
結愛「それでおば様、何を作るおつもりなんです?」
何事も無かったかのように質問する結愛、呆然と立ち尽くすのみの社長をよそに『アイテムボックス』からソース等の調味料を取り出して1人調理を進める筆頭株主。
真希子「ここまで細かく刻まれたキャベツを使うなら「あれ」しか無いだろう、私大勢でワイワイ食べるのが大好きなんだよ。」
結愛「大好きなのはいいんですが「あれ」って何なんです?」
真希子「まだ分からないのかい?仕方のない子だね・・・、まぁそこで見てたら分かるさ。」
ため息をつきながらキャベツを小麦粉などで作った生地に混ぜ込んでいく真希子。
結愛「おば様、それってもしかしてお好み焼きですか?」
真希子「やっと分かったのかい、あんた本当に(元)日本人なのかい?」
しかし結愛が気付かなかったのも無理は無かった様だ、ただこの異世界で勃発するとは思えない「あの問題」を理由に・・・。
結愛「恐れ入りますがおば様、お好み焼きのキャベツと言えば千切りでは無いのですか?」
真希子「結愛ちゃんまさか、あんた「広島風お好み焼き」の事を言ってんのかい?」
結愛「「広島風」って・・・、お好み焼きって元々広島の料理でしょう?」
どうやら義弘が解任された後の頃を中心に元の世界にあった貝塚邸で結愛や海斗の食事を作っていた料理人が広島出身だったので「作って貰っていた物のみがお好み焼き」だと思っていた様だ、ただ各々に各々の良い所があるし俺個人は両方共好きなんだよな。
結愛「テメェの好みはどうだって良いんだよ、ただおば様の『アイテムボックス』からソースやマヨネーズが出て来たのは良いけど一向に麺や飯が出てこなかったから「あれ?」と思っていただけだよ。」
真希子「結愛ちゃん、まさかと思うけどあんた神戸のそば飯と勘違いしてないかい?」
全く持って別物




