㊹
好美にとって見覚えのある女性の正体は・・・。
-㊹ やらかしてしまった古龍-
顎が外れる位の驚きをずっと隠せずにいる美麗を横目に、龍から『人化』した女性はゆっくりとテラスへと降り立った。好美達にとって、見覚えのある全体的にピンクの装い。
好美「まさか貴女様の方からお越し下さるとは思いませんでした、わざわざすみません。」
女性「こちらこそ色々と申し訳ございません、父はフィーバー中で手が離せないと申しておりますので代理で来ましたの。」
美麗「ねぇ、聞き覚えのある声だけどこの人誰なの?」
好美「美麗、何とんでもない事言ってんのよ!!こちらの方はさっきお声をかけて下さった女神様じゃない!!」
そう、テラスへと降り立ったのは「一柱の神」と称されるセリー・ラルーだったのだ。
セリー「好美さん、美麗さんの事を怒らないであげて下さいませ。この世界に来て初めての事ばかりだから動揺するのは仕方ない事じゃないですか、実際貴女もこちらの世界に来た時全く動揺してなかった訳ではないでしょう?」
好美「確かに、あの時「死んだ」かと思った時にはこの世界にいて、何が何だか分かりませんでした。」
古龍・・・、いや女神様に正論を言われて反省する好美の横で未だに驚きと動揺を隠せない美麗。
美麗「人が人魚で・・・、龍が人になって・・・、どういう事ー?!」
訳が分からなくなった美麗はその場に倒れてしまった。
セリー「あら、何か悪い事をしちゃいましたわね・・・。」
頬を掻く女神を背に急いでキッチンへと向かう好美。
好美「水持ってきます!!」
セリー「すみません、恐れ入ります。」
数分後、美麗は守に見守られ、そして女神に膝枕されながらゆっくりと目を覚ました。正直、この世界ではかなり貴重な経験と言えるだろう。
セリー「だ・・・、大丈夫ですか・・・?」
美麗「わ・・・、私・・・。」
セリー「無理をなさらないで下さい、今好美さんがお水を持って来て下さいますので。」
好美から水の入ったグラスを受け取った美麗は一気に煽って冷静さを取り戻した。
セリー「驚かせたお詫びと言ってはなんですが、治癒魔法をかけさせて頂きますね。」
セリーが右手を美麗の額に添えると、美麗の全身がゆっくりと光り出した。
セリー「美麗さん、恐れ入りますが深呼吸をしてくださいまし。」
言われた通りに深呼吸をした美麗は全身の力や緊張が抜け、自分自身が癒されていくのを感じた。
美麗「ふぅ・・・。」
セリー「良かったですわ、本当に色々と申し訳ございません。」
美麗を癒し終えたセリーが本来の目的を忘れているのではないかと少し疑ってしまった好美は、恐る恐る女神に声を掛けてみた。
好美「あの・・・、セリー神様。恐れ入りますが、美麗にいつもの説明は必要無いんでしょうか。」
セリー「そうでした、忘れてましたわ。美麗さん、お願いがあります。目を閉じて頂けませんか?」
セリーは促されるままに目を閉じた美麗の額に指を近づけ、脳内に直接「いつもの説明」を流し込んだ。
数秒後、沢山の情報を一気に流された美麗は息を切らせながら目を覚ました。
美麗「なるほど・・・、ここは優しい王様が統べるネフェテルサ王国で、神様が色々と作り替えたけど「欲しい物」は何でも『作成』で作れって事なんですね?」
セリー「まぁ、簡単に言ってしまえばそうですわ。理解力のある方で良かったです。」
好美「あの・・・、セリー神様・・・。申し上げづらいのですが、何か忘れてません?」
セリーは何を忘れていたのだろうか。