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誰にでもプライベートって物があるはずだよな
-436 必要のない懐かしい話-
ダンラルタ王国のトンカツ屋に突如『瞬間移動』して来た「おば様」こと宝田真希子はどうやら今日は店での仕事が休みだったらしく、家で美味しいものでも作ろうかと気合を入れていた様だ。
真希子「折角の休みだからゆっくりハヤシライスでも作ろうかと思っていたんだけどね、久々に弟子と食べたくなったから『探知』してみたらこれだよ。全く・・・、相も変わらずこの世界は騒がしいったらありゃあしないよ。」
ピューア「ご迷惑を掛けて申し訳ありません、折角のお休みですから師匠はゆっくり過ごして下さい。」
真希子「別に構わないよ、久しぶりにあんたと料理したかったから私だって嬉しいさね。」
久々に師匠と再会した弟子には真希子が見慣れた制服姿と違っていたので多少だが違和感があった様だ、初対面の時は私服姿だったはずだが今は何も考えない方が良いか。
ピューア「それにしても師匠、そのお姿は何処かの制服だったりするんですか?」
真希子「いや、これは私が元居た世界の伝統的なエプロンみたいな服さ。似合わないって言うなら着替えるけど駄目かね?」
ピューアは結愛の方を見た、2人共が同じ世界からやってきた転生者だからだろうか。
結愛「おば様・・・、恐れ入りますが割烹着なんて着ていた事などありましたっけ?」
真希子が筆頭株主として貝塚財閥本社へと向かう際の赤いパンツスーツ姿をしていた時の記憶が強かったからか、結愛は真希子の割烹着姿を見て開いた口が塞がらなかった。
真希子「あのね、いくら筆頭株主でも普段は(元)日本の主婦として生きている(?)私だって割烹着位着るよ。それよりその表情は何だい、そんなに違和感があるのかい?」
結愛「そ、そんな事は無いんですけど初めて見たものですから。」
真希子「そうかい?お料理する時は大抵着る様にしていたんだけどね、「初めて」って言うなら仕方が無いか。」
「おば様の発言は本当なのか」と何故か疑問に思ってしまった結愛は真希子の過去を1番に知っているはずの「あいつ」に『念話』を飛ばす事に、個人的には本人が言っているんだから疑う必要など無いと思うんだが・・・(と言うか久々に出番が来たみたいだな)。
結愛(念話)「守・・・、今ちょっと良いか?」
守(念話)「何だよ、今豚達に餌をやっているんだけど。」
結愛(念話)「それでも『念話』位は出来るだろ?ちょっと聞きたい事があるんだよ。」
守(念話)「ふーん・・・、俺は別に良いけど何なんだよ。」
結愛は「最悪の高校時代」が幕を閉じたあの日の事を思い出しながら聞いてみる事に、ただ本人達にとって数年前の記憶のはずなので曖昧ではないかと推測される。
結愛(念話)「お前、義弘の解任決議案が出された「あの緊急株主総会」が終わった時の事を覚えているか?」
忘れている訳が無い、守が筆頭株主の姿をする母を初めて見たのがあの日だったからだ。
守(念話)「確か・・・、母ちゃんが英雄の様に出て来て他の株主さん達を説得していた時だよな?と言うか普段は「あの頃や義弘の事を思い出させるな」って言う癖に良いのか?」
結愛(念話)「この際そんな事構わねぇよ、それより思い出して欲しい事があるんだよ。」
守(念話)「おいおい、それってそこまで重要な事なのか?」
結愛(念話)「俺にとったらな、頼むよ。」
何となく大袈裟過ぎる様な気がするが、結愛自身は真剣そのものだったらしい。
守(念話)「それで何だってんだよ、俺に聞きたい事なんてあるのか?」
少なくともここまで引っ張ってまで聞く事では無い気がするので正直早く済ませて欲しいんだが・・・、そうでないと話がなかなか進まない。
結愛(念話)「あの日ってさ、総会が終わった後でお前んちでカレー食ったよな?」
守(念話)「確か・・・、家の前でお前が告白して光明とディープキスしていた時か。」
どうやらこの『念話』はその場にいた上級人魚や筆頭株主にも聞こえていた様で・・・。
真希子「あの時はお邪魔して本当に申し訳なかったね、熱々の雰囲気がムンムンしてたよ。」
ピューア「へぇ・・・、結愛って元の世界で結構大胆だったんだ。」
結愛「えっと・・・、それに関しては・・・。(念話)守、てめぇ余計な事を言うな馬鹿!!」
良いぞ、もっと言ってやれ!!




