㊶
熱々を熱々のまま食べたいのが好美の性らしい。
-㊶ 誰だって食欲が湧く-
出来立てのグラタンに食らいついた好美は、フーフーしなかったので料理の熱さで口をハフハフさせていたが何故か幸せそうに見えた。
好美「あっつ・・・、あっつ・・・、でも美味しい・・・。」
ピューア「慌てて食べるからよ、ほら水飲んで。」
ピューアがこう言いながら手渡したのはカップ酒だった、この件、守達は身に覚えがある気がしてならなかった。
気を取り直して、好美は「バカ辛鍋」へと目線を向けて箸をつけた。
好美「凄い色だけど何が入っているの?」
ピューア「フフフ・・・、食べてからのお楽しみ。」
好美はたっぷりの野菜と春雨を一緒に口へと運んだ、ただ、またフーフーしなかったので・・・。
好美「あっつ・・・、これもあっつ・・・、辛いからビール欲しい。」
ピューア「馬鹿ね、さっきもそうだったじゃないの、ほら水。」
そう言って次に渡したのは焼酎、2人が馬鹿なのはお互い様らしい、その様子を見て守は笑っていた。
好美「何よ守、馬鹿にしてるでしょ。笑わないでくれる?」
守「いやこの光景が滑稽で何処か可愛いなと思ってさ、ただ以前に見た事のあるのは気のせいかなって・・・。」
真希子「そんなの気にしても仕方ないじゃないか、折角の料理が冷めるだけだよ。」
確かに真希子言っている事は間違っていない、しかし何かがおかしい。先程から料理の減りがやたらと早い様な気がする。ただ以前ナルリスの店で見かけた時の犯人である好美は目の前にいるので守は訳が分からなくなっていたが、その疑問はすぐに解決した。守は料理のすぐ傍で箸だけが異空間から覗いていたのでその箸の持ち主に小石を掴ませてみた。
女性(念話)「痛っ!!何だよ、小石じゃねぇか!!守・・・、やりやがったな!!」
守(念話)「やっぱり結愛だったか、お前なら皆大歓迎だから堂々と来いよ。」
結愛(念話)「社長の俺が仕事サボって行くわけにもいかねぇだろ、社員たちに示しがつかねぇじゃんかよ。」
つまみ食いをしている時点で十分示しは付いていない気がするが、気のせいだろうか。
結愛(念話)「仕方ねぇだろ、毎日資料とにらめっこしてんだから腹も減るんだよ。お前らが羨ましいぜ、俺も酒が呑みてぇよ。」
守(念話)「社長だから自由が利くんじゃねぇのか?」
結愛(念話)「そういう訳にはいかねぇよ、秘書のヒドゥラが目を光らせてんだぞ!!」
流石はラミアだ、大蛇が故に睨みを聞かせるのは得意技の様だ。
守(念話)「じゃあ、つまみ食いもまずくねぇのか?」
結愛(念話)「そこは・・・、テクを使うんだよ。」
最悪だったと言っても過言ではない高校時代、炭酸飲料が嫌いだった義弘の目の前で結愛がコーラを必死に隠そうとしていた事を思い出した守。
守(念話)「お前確か、早弁も得意だったよな。」
結愛(念話)「うっせぇ、お前も人の事言えんだろうがよ!!」
2人の会話を決して聞き逃さなかったのは守の母親であり、貝塚財閥の筆頭株主である真希子だった。
真希子(念話)「あんたも守と一緒でちゃんと授業を受けていなかったのかい?大企業の社長が聞いて呆れるよ。」
結愛(念話)「おば様、もう過去の話ですわ、勘弁して下さいまし。」
相も変わらず真希子にはタジタジの結愛、真希子はある意味育ての母と言っても過言では無いからだ。
そんな中、テラスにあるプライベートプールの方から大きな水音がした。
ピューア「大変!!人が・・・、人が落ちて来たわ!!」
守「えっ?!人が落ちて来たって?!」
好美「ちょっと・・・、何で・・・、何であんたがここにいるのよ!!」
落ちて来たのは誰?