408
何の為の会話だよ、全く・・・。
-408 気付かなかった・・・-
物陰に隠れて息子を驚かす事に集中しすぎた上級鳥獣人は息子夫婦が何を話していたのかをしっかりと聞いていたはずだが、ナイリの驚いた顔を見て満足したが故にすっかりと本題を忘れてしまっていた様だ(駄目じゃん)。
ナイリ(当時)「勘弁してくれよ、驚かされたから俺も何の話をしてたか忘れかけたじゃねぇかよ。」
もし2人共が本題を忘れていたとすると先程までの時間はただ父親が悪ふざけをしていただけの物となってしまう、それだけは流石にやめてほしい。
ソン(当時)「それで・・・、何の話だっけ・・・。」
本当に忘れてたんかい、勘弁してくれ。
ナイリ(当時)「だからな、「卵を産まなくなった鶏はどうしてたのかな」って事だよ。」
おっと息子の方はしっかり者の様だ、前言撤回しないとな。
ソン(当時)「ペンネちゃんがさっき言ってた通りだよ、今でもちょこちょこ行っているがうちの夕飯で使っているんだよ。お前が知っている通り俺は牛肉や豚肉よりも鶏肉が好きなんだから別に食っても良いだろ?それとも自分も一緒に食ってると言うのに何か文句でもあるってのか?」
ナイリ(当時)「別に文句なんてねぇし、「悪い」なんて言ってねぇだろ?」
何となくだが、理由が単純だとは思えないナイリ。
ソン(当時)「じゃあ何だってんだよ、そうやって疑問に思うって事は不審に思う点があるからだろ?」
ナイリ(当時)「いや・・・、同じ鶏肉なのに販売用に出荷しないのかなって思ってさ。」
ソン(当時)「お前・・・、そんな事も知らないのか?何の為に学校に行ってたんだよ。」
ナイリ(当時)「そんなの習っている訳がねぇだろ、専門外だって。」
当然と言って良いのか分からないが、ナイリが貝塚学園魔学校へと通っていた頃にはまだ農学部が存在していなかったので知らなくても仕方ないのかも知れない。
ソン(当時)「良いか、この世界にはうちの様に鶏卵を出荷する為に鶏を育てている養鶏場とは別に肉食用に育てている場所もある。世の中「餅は餅屋」って言うだろう、俺達は俺達で自分達の仕事をしっかりしてりゃ良いって事さ。」
傍らで見ているだけの俺からすれば答えがあやふやになっている様に聞こえるが、要は「互いに干渉しあわない」という暗黙のルールが存在しているとの事。
ナイリ(当時)「じゃあ・・・、俺達が肉食用に鶏を出荷するのは違反になるって事?」
ソン(当時)「いや別に、ただ皆が空気を読んでいるだけさ。」
どうやらお互いの商売を決して邪魔しない様に気を配っているだけの様で特に法律で定められている訳でも無いらしい、それを知ったナイリは改めて実家に出て来る食事の数々を思い出していた。
ナイリ(当時)「勿体なく無いか?折角美味しく育っているというのにそれを世に出さないなんて、俺は我慢出来ない。」
おっと・・・、これは親子喧嘩でも起こるんじゃ無いか?出来れば穏便に済ませて欲しいんだが・・・。
ソン(当時)「そうか・・・、まぁこれからはお前が主体となってここを経営していくんだからやりたい様にやってみろ。」
あらま、優しい親父さんで羨ましいな。別にいけない事をする訳じゃ無いから俺も止めないぜ?何だよ・・・、「余計な口を挟まない方が良い」って?悪かったな。
ナイリ(当時)「一先ずなんだが次に処分(食う)予定のとりに・・・、いや鶏って何処にいるんだ?味見をしながら色々と考えないとな」
息子に頼まれた父は卵を産まなくなった鶏のいる鶏舎の端の方へと案内する事に。
ソン(当時)「こっちだ・・・、と言うかお前食う事しか頭に無いだろ。」
ナイリ(当時)「い・・・、いや・・・。そんな事無いよ?」
ソン(当時)「嘘つけ、さっき「鶏肉」って言いかけてたしその涎は何だ。」
顔に出てるよ、嘘つくのが下手だね・・・




