406
ナル、落ち着けって
-406 その場の流れでやって良い事では無い様な・・・-
支払いを終えたナルリスが『瞬間移動』で戻った時、ミーレンの目の前には多数の缶ビールが並んでいた。店で散々呑んだはずなのに未だ呑む気満々なのがオーナーは個人的に許せなかったので「後で絶対先程の領収書を叩きつけてやろう」と心中で誓っていた様だ、しかし長年連れ添って来た妻・光には見事にバレてしまっていた様だ。
光(当時)「落ち着きなさいって、気持ちは分からなくも無いけどね。」
ナルリス(当時)「だって見てみろよ、結構な値段だったんだぜ。」
領収書を渡された光個人は銀行口座の中に莫大な貯蓄があるので屁とも思わなかった、ただ(ここだけの話)お小遣い制の主人には相当なダメージだった様だ。
ナルリス(当時)「笑わないでくれよ、今月の小遣いが半分以上飛んで行ったんだぞ。」
光(当時)「ごめんごめん、後でチョイ足ししてあげるから許してあげなって。」
ナルリス(当時)「流石は光様、いたわり方を分かってらっしゃる。正しく「神様仏様光様」でございます・・・。」
光(当時)「ナル・・・、それ本当に思っている訳?」
居酒屋のレジに表示された金額によるショックが大きかったのか、実は正気を保てそうになかったという吸血鬼。俺も気持ちは分からなくもないが今は楽しい席にして欲しいというのが個人的な意見。
そんな中、少し離れた所で相変わらず馬鹿みたいな量の酒を浴びる様に吞んでいた犯人の話題はこの日の主役(?)である恋人達の事に。
ミーレン(当時)「ねぇ・・・、ナイリ君だっけぇ?正直に聞くけど、妹の事をどう思ってんのよ。」
ペンネ(当時)「ミーレン、やめなって。吞み過ぎだよ・・・!!」
恐らくミーレン自身は酒の肴にする程度に質問したと思われるが、恋人達は本気にしている様だ。ただ店呑みから宅呑みへと切り替わったからか、2人共改まった様に安心して呑んでいたので良い具合に酔いが回って来た様だ。
ナイリ(当時)「お、俺は・・・。」
ミーレン(当時)「何よ、何処が好きとか言えないってのぉ?」
軽い気持ちで言える訳が無かった、双方共にどう思われているかが分からなくて不安だったからだ。返答次第では自分達の今までの思い出や関係が一瞬で崩れるかもかも知れないと言っても過言では無い、正直言って楽しく呑んでいたはずなのに酔いが冷めてしまいそうだった。
ナイリはついこの先日までペンネに辛い表情ばかりをさせていたので自分といる事を嫌に思い始めたのではないかと不安だった、それに対してペンネ自身は隣で笑っている事が少なくなっていた為にこんな自分とずっと一緒にいてくれるのだろうかという疑問に思っていた。
ただ2人の気持ちは同じだった。そう、ずっと変わらず「相思相愛」だったのだ。
ナイリ(当時)「「何処が」とか聞かれても答える事なんて出来る訳無いじゃ無いですか、「全部」が好きなんですから決めるなんて出来ませんよ。」
酒による物なのか、それとも恥ずかしさからなのか、上級鳥獣人は顔がずっと赤くなっていた。ただ姉の傍らでその返答を聞いていた妹は嬉し涙を流していた様だ、きっと待っていた言葉が聞けたので感動していたのだろう。
ミーレン(当時)「彼氏さんはそう仰っていますけど・・・、ってあんた何泣いてんのよ!!」
ペンネ(当時)「良いじゃない、私だって泣きたくなる時くらいあるもん。」
ペンネの泣き顔を見たミーレンはその場の勢いに任せてナイリをけしかけてみる事に、いくら酔っているからってやって良い事と悪い事があると思うが?
ミーレン(当時)「成程ね・・・。ねぇナイリ君、私の大事な妹を泣かせちゃった責任をどう取ってくれる訳?」
「どう」と聞かれても返答(方法)は1つしか無い・・・、と俺は思う。
酔った勢いで質問されたナイリは改まった様子でその場に立ち上がった、まさか・・・。
ナイリ(当時)「そんなの決まっているじゃ無いですか、ペンネと結婚させて下さい。」
ミーレン(当時)「あのね、私が決める事じゃ無いでしょ。どうすんの?」
妹の方をチラッと見た姉、当然の様にペンネの返答はずっと前から決まっていた様だ。
ペンネ(当時)「勿論・・・、お願いします・・・!!」
はぁ・・・、長かった・・・
 




