④
学生時代からの恐怖・威厳は続いていた。
-④ 彼氏の扱い-
学生時代の頃から相も変わらず「鬼の好美」は健在だったが、この世界に来て数年が経ち少し変化があった様だ。
イャンダ(内線)「好美ちゃん、別に呑むか呑まないかは勝手だけどまあ引越しの作業が終わって無いんだろ、大丈夫なのかい?」
やはり元竜将軍と言えどオーナーである好美には頭が上がらない様だが、イャンダは好美が忘れっぽい性格だった事をしっかりと覚えている様だ。
好美「大丈夫だって、あと数箱しか残って無いんから。」
守はその「あと数箱」の事を思い出した、中身は家電等が中心で比較的大きめの物ばかりだった。まさか、全部一人でやらせるつもりなのだろうか。
守の表情を見た好美は恋人が何を考えているのかを察して少し表情を歪ませた。
好美「何、女の子に重たい物を持たせるつもり?!」
好美の言葉に守は「まずい」と思ってしまった、このままでは自分が「鬼の好美」の餌食になってしまう。
守「い・・・、いえ・・・。何を仰いますやら、自分の荷物なんで自分で行います。」
恐怖からか、つい敬語になってしまう守。ただ、この会話は内線を通してイャンダへと筒抜けだったらしく・・・。
イャンダ(内線)「好美ちゃん、あんまり彼氏君を怖がらせちゃ駄目じゃないか。」
イャンダの優しさにじんと来る守の目の前で頬を膨らませた好美。
好美「何よ、イャンダも守に味方する訳?!」
今度はイャンダに矛先が向いた様だが、店長は回避する方法を知っていた。
イャンダ(内線)「まぁまぁ、落ち着きなよ。ほら、エレベーターに日本酒を載せておいたから。」
しかし今回は方法(というより手順)をあやまったらしい・・・。
好美「だれが冷やって言ったのよ?!熱燗でしょ、熱燗!!」
拉麵屋のオーナーは相当ご立腹らしく、イャンダは逃げる様に電話を切った。その様子を見ていた守も逃げる様に荷解きへと戻った。
数秒後、好美の大声が守の新しい部屋へと聞こえて来た。
好美「守、何やってんの?!1人で寂しいんですけど!!」
今まで1人にさせていた分、「寂しい」という言葉にどうしても反応してしまう守。
守「はいはい、今行きます・・・。」
好美「「はい」は1回でいいの!!」
守「はーい・・・。」
日本でもよくある光景に守が安心しながら食卓へと戻ると、既に肴は消えてしまっていた。よく見ると好美は真っ赤だった上にいつの間にか着物に着替えていた。
好美「もう寝て良い?」
好美は気持ち良さそうだ。
守「はい、どうぞどうぞ。」
守がやけくそ気味に答える中、再び内線が鳴った。ディスプレイには「暴徒の鱗」の文字、またイャンダかと思いながら出ると別の男性だった。一先ずスピーカーで話す事に。
守「も・・・、もしもし?」
男性(内線)「あれ?番号間違ったかな、男の声がするんだが。」
守「すみません、今日から好美と一緒に住むことになった宝田 守です。」
男性(内線)「君がうちのオーナーの変態彼氏だな、イャンダから聞いているよ。」
守「「変態彼氏」って・・・、すみませんがどちら様でしょうか・・・。」
声の正体とは、そして彼の目的とは?