400
400話目だというのに暗い話になりそうなんだが・・・
-400 もう1人のエルフ-
自分の事を心配してくれているとはいえ、目の前の恋人に辛そうな表情をさせてしまった自分の事を呪いたくなった上級鳥獣人は折角過去から脱却できたというのにこのままだと「あの頃」のままでは無いかと自責の念に駆られていた。
ナイリ(当時)「いや、何でも無いよ。本当にごめん・・・。」
特にナイリ自身が罪を犯した訳でも無い、寧ろどちらかと言うと被害者だというのに「もしかしたらペンネからすれば「あの頃」の自分が抜けきっていないのかも知れない」、そんな悩みが脳内をぐるぐるとまわっていたのだ。
ペンネ(当時)「本当?何処か辛そうだけど・・・。」
優しい言葉に泣きたくなってくる、しかし次泣くときは共に嬉し涙を流す時にしたいと個人的に思っていたバルタン。その為に今自分がすべきことは本音を打ち明ける事だろうか、それとも鳥獣人らしく冗談でもかまして雰囲気を笑い飛ばす事だろうか。
ただナイリ個人は後者を選ぶことに少し抵抗を持っていた、「ただ茶を濁している」事が即座にバレてしまいそうだったからだ。きっとそんな事をしてしまうと心から心配してくれているペンネに失礼じゃないか、そう思いながら心の中で自らの頬を殴った。
ナイリ(当時)「なぁペンネ、ペンネ自身は養鶏に興味とかある?」
この時点では将来が決まっていた訳では無かったというのに何を言っているんだろうか、下手すればこれってある意味プロポーズみたいなもんだぞ。
ペンネ(当時)「突然だね、そうだな・・・。私自身動物は好きだし、何かを育てる事って素敵だなって思うけどどうしたの?」
どうやら気付いていない様だ、ナイリはこの事とペンネの返答に少しホッとしていた。
ただその反面、やはりバルタンの心中には不安が残っていた。改めて言う事では無いかも知れないがナイリ自身はペンネを必要としている、それどころかペンネ無しでは生きていける自信が無い。ただこのまま自分の気持ちを打ち明けた所で一番重要なのはペンネ自身がどう思っているかどうかだ、返答次第では足の先から崩れ落ちる自信がある。
しかし結婚を意識しているのは自分だけなのかも知れない、今はどうにかして何とかこの場を誤魔化したいが何か無いだろうかと辺りを見廻していたナイリの目線の先に卵料理専門のレストランが(と言うかネフェテルサ王国にそんなのがあったんだな)。
ナイリ(当時)「い、いやぁ・・・、養鶏とかしてたら毎日オムレツとから卵焼きとかが食べ放題だなって思ってさ・・・。」
ペンネ(当時)「何それ、飽きちゃうじゃん。」
実際に養鶏業をしているナイリの実家は毎日の様に卵料理が食卓に並んでいた上に、今(その時)言えるマックスのジョークだったのでウケて良かったと胸を撫で下ろすばかりだったという。
そんな中、2人はいつの間にか街の外に出ていた。ただゆったりとした時間を過ごしたいと思っていたので丁度良かったという、所謂結果オーライという奴だ。
ペンネ(当時)「ねぇ、食べ物の話をするからお腹空いてきちゃった。」
ナイリ(当時)「そう言えばソフトクリームしか食べて無かったな・・・。」
中心街を抜けて結構歩いて来たのでこの辺りに店があったかどうかが少し不安になっていた2人を必死に呼ぶ声が、声の方へと振り向いてみると洋食のレストランらしき建物の入り口付近からダーク・エルフの女性がこちらに向かって手を振っていた。
女性(当時)「ペンネー、ペンネでしょー?」
ペンネ(当時)「ミーレンじゃない!!何でここに?!」
驚きを隠せない様子のペンネ、どうしたと言うのだろうか。
ナイリ(当時)「え、えっと・・・、お知り合い?」
ペンネ(当時)「知り合いも何も、私の双子の姉よ!!」
ナイリ(当時)「双子のお姉ちゃんだって?!何と言うか・・・、全然・・・。」
ペンネ(当時)「「色が違う」でしょ?あれよ、私は母親で姉は父親からの遺伝が強かったからね・・・。」
今更言うべき事か分からないが、この世界における「種族」は親からの遺伝が強く影響する様だ。特に「上級」へと上がった時にどうなるのか、これは突然変異でも起こらない限り遺伝子が関係すると言う。
ミーレン(当時)「隣にいるの彼氏ー?私にも紹介しなさいよ!!」
何ちゅうタイミングやねん・・・




