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卵の大きさの理由は?
-396 只事では無かった-
ピューアはメラルークが「B定食」で使用している卵をじっと見つめながら考えていた、確かに一般的な物に比べて一回りも二回りも大きなこの卵を使用すれば1つだけでオムレツが出来るのも納得がいく。しかしどうしてこの様な大きさの物が出来上がったのだろうか、それとどうしてこの様な卵がここにあるのだろうか。まさかと思うがこれも「訳あり品」なのか、「大きくなり過ぎて規格外な物になっちゃいました」的な理由なのか?
ピューア「いや・・・、考えすぎかもね。下手すれば「大玉卵」として売り出すかもしれないもんね、でも本当に大きいな・・・。うちの店でも使わせて貰えないかな。」
調理場の端で1人考え込む娘を見かけた父親は本人の様子を伺いながら声をかけた。
メラルーク「ピュー、どうかしたか?」
ピューア「い、いや・・・、何でも無い。ごめんなさい。」
「何でも無い」と言うならあそこまで考え込む事は無いはずだと思った店主。
メラルーク「別に大丈夫だよ、確かにまぁそれ程大きな卵があったら「どうしたんだろう」って思うのも無理は無いさ。父さんだってそう思ったんだもん、良かったら何を考えていたのか教えてくれないかい?」
長女が話しやすい様に言葉を選んで優しく声をかけた父親、別にやましい事を考えていた訳では無いから話しにくい訳では無いので思い浮かんでいた疑問を投げかけてみる事に。
ピューア「いやね、いくら何でも大きすぎやしないかなって・・・。お父さんから聞いた通り餌と環境のお陰で大きくなったのは納得出来るけど・・・、何て言えば良いんだろう。」
メラルーク「「どういった経緯で出来たんだろうか」って思ったのか?」
ピューア「そう、こんなにインパクトの強い大きさには何処か理由があるんじゃないかなって思ったの。良かったらお父さんが知っている事を教えてくれない?」
メラルーク「分かったよ、でも今は朝営業の途中だから落ち着いてからでも良いかな。」
ピューア「勿論、お店に迷惑を掛けるつもりは無いもん。」
実家(この店)での研修の条件を忠実に守る新店の副店長、朝営業の間店主の仕事をひたすらに手伝った後調理場で皿洗いをしながら改めて疑問を投げかけてみる事に(因みに親子共に『メイクスライム』を使用しているので皿洗いは指一本で済んでしまう)。
メラルーク「ああ・・・、そうだったな。父さんがあの卵を仕入れる事になったきっかけというはうちのグランドメニューに入っている「チキンカツ」なんだよ・・・。」
メラルークによると話は数か月前に遡るとの事、当時店主は卵や鶏もも肉を別の養鶏場から仕入れていたのだがそこの主が突如不治の病に倒れてそのまま帰らぬ人になってしまったそうなのだ。そこで店主は主の家族に「養鶏場を続けるつもりは無いか」と聞いてみたのだが、独自に開発した技術を駆使して行っていた養鶏の仕事を主が誰にも伝えていなかったので「続けたくても出来ない」と言わざるを得なくなってしまった様なのだ。
そうして新たな仕入れ先を探していたメラルークの下に1本の電話が入った、相手は結婚したばかりの女性と実家の養鶏場を継ぐ事になったという上級鳥獣人のナイリだった。
ナイリ(当時・電話)「もしもし、調子はどうだ?元気でやってるか?」
理由はどうであれ、売れ筋商品の1つであるチキンカツを出せなくなってしまったのだ。正直言って調子が良い訳が無い。
メラルーク(当時)「ぼちぼちさ、平々凡々な毎日が続いているよ。」
相手に気を遣わせないためにここでも言葉を選ぶメラルーク、相当良い性格を持っていないとここまではなかなか出来ない。
メラルーク(当時)「それでどうした?親父さんの養鶏場を継ぐ事になったんだから暇じゃ無いだろう?」
幼少の頃から仲が良かった2人はナイリの父親が経営する養鶏場の周辺を遊び場にしていたからか、いつも多忙な日々を送っている主の様子をよく見ていた。
ナイリ(当時・電話)「確かにな、思った以上に大変なんだよ。餌1つでも相当な拘りがあるから覚えるのが大変でね、でも楽しくやらせて貰っているから以前よりはマシかと思ってね。」
以前所謂「ブラック企業」に勤めていたナイリは休日出勤や長時間にわたる残業の積み重ねによるストレスを抱えていたので会社を辞めたがっていた様だ、異世界も大変だ。
本当に日本に似た世界




