㊴
冷蔵庫の中を見て呆れたピューアは買い物へと出かけた。
-㊴ 肴を考える人魚と、急ぐ不死の魔法使い-
マンションの一室で宝田親子がホークマン・クロンから肉惣菜を受け取り、大家が郷土の味に舌鼓を打ちつつビールを楽しんでいた頃、冷蔵庫の中身に驚きを隠せなかった人魚は叔父であるゲオルの店へと向かった。
ゲオル「ピューアじゃないか、今日は何を持って来てくれたのかな?」
最近、拉麺以外の料理を忘れない為にゲオルに手作りの弁当を渡す様になっていたピューア。
ピューア「今日は別件なんです、好美の家の冷蔵庫に何も入ってなかったから食料を調達しに来まして。」
ゲオル「そうかい、じゃあ久々にラリーさんの所で買おうかな。」
ピューアの手作り弁当のお陰でラリーの店にあるカレーパンがご無沙汰になっていたゲオル、ただパン屋で働く光からとある情報を聞いていた。
ゲオル「最近、サンドイッチを出し始めたみたいだから食べてみようかね。」
ピューア「確か・・・、ナルリスさんが作っている豚カツやコロッケを挟んだコラボサンドが人気だって聞いてますよ。」
ゲオル「それは聞き捨てならない情報じゃないか、美味い物と美味い物が組み合わさっているから不味い訳が無いよね。こうしちゃおれん、急いで買いに行こう!!」
店の店長は着用していたエプロンを脱ぎ捨てて急ぎラリーの店へと向かった、その様子を偶然その場に居合わせた嫁のイェットが見逃さなかった。
イェット「あんたね!!自分で洗濯するならそうしても良いけど、いつもほったらかしにしているだけじゃないか!!パン屋に行くならちゃんと拾ってから行きな!!」
妻は大声で怒鳴ったつもりだったが、夫は既に声の届かない所まで走ってしまっていた。
イェット「あの人ったら・・・、仕方が無いね・・・。・・・って、あらま、ピューアちゃんじゃないか。やだよ、恥ずかしい所を見られちまったね。」
ピューア「こんにちは、叔母さん。今日お店は大丈夫なんですか?」
イェット「ああ、バリスがたまには休めってうるさくてね。仕方ないよ、1週間ずっと働いてたんだもの、好美ちゃんも黙って無くて困ったもんだよ。」
イェットの様子を『察知』したのか、コンビニのオーナーから『念話』が飛んで来た。
好美(念話)「何言ってるんですか、バリスさんや私だけじゃなくて皆が心配してたんですからね。私も代わるって何回も言ったのに断り続けて体壊したらどうするんですか、今日はちゃんと休んで下さい!!店に来るのも駄目ですからね!!」
イェット(念話)「分かったよ、ちゃんと休むから許しておくれ。」
好美(念話)「本当ですね?来たらすぐに分かるんですからね!!」
イェット(念話)「もう・・・、何回も念押ししなくても分かったから。それよりあんた、家の魔力保冷庫(冷蔵庫)の中が空っぽだって言うじゃないか、ピューアとうちの旦那の会話が聞こえて来たからびっくりしたよ。」
好美(念話)「ちょ・・・、丁度昨日彼氏と鍋して無くなったんです。後でちゃんと買いに行くから許してほっといて下さい。」
2人の『念話』に笑みを浮かべながらピューアは一先ず自分の予定する料理に必要不可欠な商品を探しに行った、やはり元寿司職人なんで和食にするのかと思われたが違う様だ。
ピューア「確かこの辺りに・・・、あったあった。結構種類があるんだね、でも今日はこれ・・・、そうだ!!こっちにしても面白いかも!!」
ニクシーは一度手に取った商品を棚に戻して別の物を選ぶと、レジに向かい会計を済ませた。最近はこの世界でもキャッシュレス決済が主流になって来ている様だ。
レジ係「お支払いはいかが致しましょう?」
ピューア「「貝塚Pay」でお願いします。」
レジ係「アプリのバーコードをどうぞ。」
その名の通り貝塚財閥がこの世界で初めて開発したキャッシュレス決済だ、機械を購入するだけなのでどの企業や個人商店でもすぐに導入できると人気で、隣国のバルファイ王国やダンラルタ王国のお店でも沢山利用されていた。
ピューア「さてと、これとこれは買ったから最後にあれをあの店で買おうかな。」
少し酒の入っていた人魚は愛車ではなく『瞬間移動』である店へと向かった。
ピューアが向かった先は?