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という事はA定食って人気なのかな・・・
-392 裏側-
父親からA定食における低価格のからくりを聞いて調理場に戻った上級人魚が改めて客席の方を見廻した時、殆どのお客さん達がどちらかと言えば物凄くシンプルなB定食を楽しんでいる事に気付いた。
ピューア「店側の立場からすればA定食も破格で提供しているというのにどういう事なの?」
不思議に思ったピューアは先程見た黒板をもう1度確認した、するとまるで意識を失ったかの様に目を白くしてその場で立ちすくしていたのでマーマンが焦って駆け寄ってきた。
メラルーク「おいおい、どうしたってんだよ。大丈夫か?!戻って来いって!!」
父親が肩を強めに叩いた事により息を吹き返したかのように目覚めた娘は父親を睨みつけて問いただした、おいおい折角助けてくれたのにお礼位言ったらどうなんだよ。
ピューア「後で言うって、それよりお父さん!!あれどういう事?!いくらB定食がシンプルな内容だからって1人前290円は安すぎるって!!朝が来る度に赤字覚悟なの?!こんな事言いたくないけど馬鹿なの?!」
大勢のお客さんがいる前で店主の事を「馬鹿」と罵ってしまう程だ、ピューアの驚きは相当な物だったらしい。
メラルーク「待て・・・、お客さんの前だからちょっとは落ち着いたらどうなんだ。」
ピューア「落ち着ける訳が無いじゃない、ちょっとは店の事を考えてよ!!」
そう言うとすぐ傍にあった黒板消しを手にして価格を訂正しに向かおうとしたニクシーを急いで引き止めたマーマンは騒音を立てて迷惑を掛けてしまった事をお客さんに謝罪した後、調理場でグラスに水を注いで手渡した。
メラルーク「ほら、これでも飲めよ。それとその黒板消しは黒板をよく見てから使え。」
娘をその場に座らせると客足が少し落ち着いて来た事を確認してホールから例の黒板を持って来て一言。
メラルーク「ほら、ここをよく見てみるんだ。」
メラルークは「B定食」と書かれている辺りを指差してピューアに見せた。
ピューア「えっと・・・、「B定食(ソーセージ・ハム・ベーコンから1種類+目玉焼き)」だよね。これはさっきも見たよ。」
メラルーク「そうだな、ただその下には何て書いてある?」
ピューア「「下」ねぇ・・・、ってこれ何?」
ピューアが言われた通りに目線を下にやると少し小さな文字で表記がされている事に気付いた、目の前で気付かない位なので遠くからなら尚更だったのかもしれない。
ピューア「えっと何々・・・、「貝塚学園魔学校高等部の生徒の皆さんが授業の一環で作った畜産加工品を使用しています」だって?どういう事?」
すると2人の様子をまた『探知』で覗き見していたのか、例の「あいつ」が再び『瞬間移動』して来た。ただ何処かいつもと違う感じがするんだが・・・、ただの気の所為か?
結愛「悪かったよ・・・、これに関しても俺から説明するから許してくれよ。」
ピューア「結愛・・・、ちょこちょこ来るけど本当はあんたって相当暇なんじゃないの?」
再び言う程の事でも無いと思いたいのだが結愛は決して暇な奴では無い・・・、と思う。
結愛「暇じゃねぇよ、これの何処が暇そうに見えるんだよ。」
ピューア「あのね・・・、その姿見てあんたの事を暇人以外にどう言えってのよ。」
突然やって来た代表取締役社長はジャージ姿で携帯型ゲーム機を握りしめていた、何処からどう見ても仕事中には見えない。
結愛「誰が「仕事」って言ったんだよ、今日配信のクエストで必死になってたんだよ!!」
ピューア「もう・・・、「忙しい」ってそっちだったのね・・・。はぁ・・・。」
頭を抱えてため息をつく上級人魚、正直呆れて物が言えない。
結愛「な・・・、何だよ・・・。」
ピューア「いや別に・・・、ただあんたも1人の人だったのね・・・。」
平和だな・・・




