387
カレーを始めた本当の理由とは・・・
-387 気になる-
確かにメラルークがカレーの提供を始めたきっかけは「ライスバー」であったが、実はそれ以前からずっと思い悩んでいた事があった。
いくら自らの舌で選び抜いた拘りの豚肉の各部位を使ってるからと言っても必ず端材(切れ端)は発生する、その使い道に困っていたそうだ。
こう言ってしまえば難だが心中で「大食いの次女がいるから悩む必要はないだろう」と思わず声をかけてしまいそうになる自分がいた様だが、よく考えてみれば当時は長女と共にネフェテルサ王国にある(好美所有の)マンションの一室に住んでいた事も決して忘れてはいけなかった事実。
しかし今となってはその長女がバルファイ王国に引っ越した事をきっかけにメラは(何故か)実家に戻って来てしまっている(別に悪く言うつもりは無かったが)、今でも食欲旺盛な本人やお客さんを満足させることが出来る物は無いだろうか・・・。
そう思い悩んだ末に完成させたのがこのカレーだった、切り落とし(若しくは細切れ)にした豚肉を中心に地元で採れた野菜やスパイスをふんだんに使用した物だ。これも決して店主1人だけでは完成しなかった商品の1つ、正直言って単品での販売を視野に入れるべきかもしれないと自問自答する毎日。
ただ「トンカツ屋らしさ」を強調させる為にはどうするべきか・・・、その答えが見つかるまでは一先ずライスバーの一角における提供でお客さんの意見に耳を傾けてみる事に。
メラルーク「やっぱり「豚の味は豚で活かす」という事を重視しないといけないのかもな、ただどうすれば良いか・・・。」
肉を叩く手を止めて一言呟く父、その一言を娘は決して聞き逃さなかった。
ピューア「お父さん、何を悩んでいるの?」
メラルーク「いや別に・・・、気にしないでくれ。」
ピューア「いやいや、完全に手が止まってんじゃん。「気にして欲しい、構って欲しい」って言っている様な物だよ?」
メラルーク「そうだな、悪い悪い。」
店に出す料理等の改良についてはいつも必ず1人になった時に考える様にしていたメラルークは今回の方程式の解も自分のみの力で導き出すつもりでいた、ただ何が足りないというのだろうか・・・。
メラルーク「なぁピュー、1つ聞いても良いか?」
決してこの悩みの答えを他の人に聞くつもりは無い、ただせめてヒント位は貰っても良いんじゃないかと・・・。
ピューア「唐突だね。私で良かったらだけど・・・、どうしたの?」
メラルーク「ピューはどんなカレーが好きなんだ?」
ピューア「「どんな」って言われてもな・・・、カレーはカレーだし。」
確かに間違っている事は言っていない、しかしいち料理人の端くれとしてカレーも多種多様なのだという事を考慮に入れて欲しいという気持ちも無きにしも非ず。
ピューア「でも強いて言うなら彼氏と食べに行った蕎麦屋のカレーかな、少し優しい味と言うか。」
メラルーク「ああ・・・、確かに一理あるかもな。」
「蕎麦屋のカレー」、言ってしまえば「和風出汁の入ったカレー」だ。口に入れた瞬間に和風出汁の風味がふんわりと口いっぱいに広がる優しいカレー、ご飯は勿論蕎麦や饂飩にもピッタリな美味しさの持ち主。
メラルーク「よし、試しにやってみるか・・・!!」
ピューア「大丈夫?参考になった?」
メラルーク「十分だ、ありがとう・・・!!」
早速明日の仕込みの際にやってみよう、ただその前に気になる台詞があった様な・・・。
メラルーク「すまんが・・・、ちょっと待ってくれるか・・・?ピュー、何処か引っかかる一言があった様な気がするんだが?」
ピューア「気の所為じゃない?それより早くお肉を仕込まなきゃじゃないの?」
娘の発言は決して間違いでは無い、でもやはり気になって仕方が無い。店主として・・・、いや父親として!!
メラルーク「そうなんだけどさ、お前さっき「彼氏」って言わなかったか?」
ピューア「言ったよ、また今度紹介しようと思ってんだけどちょっと前に出来たの。」
メラルーク「マジか・・・、ついに娘に彼氏が・・・。俺も歳を取る訳だな・・・。」
父親の心理って一体・・・
 




