385
冗談じゃ無かったのね・・・、何かスンマセン・・・
-385 侮れない-
俺自身は咄嗟に出た冗談だと思っていたのだが、デルアが「ビル下店」の調理場で1人頭痛薬と胃薬を服用する一方で「C’ s キッチン」のホールでは「朝ごはん」と称してダンピール(ガルナス)達が相も変わらず飯を貪っていた。
上級人魚は先程からずっと女子高生達の方を見て「2人共遅刻するのではないか」と心配している一方で、「まぁ『瞬間移動』でも使えば何とかなるか」と言う気持ちも芽生え始めていたので正直「どうにでもなれ」とやけくそ気味になっていたのも否定はできない。
ただ元黒竜将軍との『念話』でも言った通り、業務用の炊飯窯一杯に用意していた特製の炊き込みご飯が今にも無くなろうとしていたので「このままでは商売にならないのではいか」とピューア自身は危惧していた様だ。
ピューア「お・・・、お父さん・・・。どうしたら良いのかな、炊き込みご飯が無くなっちゃうよ。」
白米と違ってだし汁や刻んだ野菜と油揚げといった具材を用意するという手間が必要となる為に開店前からバクバクと食われてしまうと正直言って困ってしまう、しかし長女から報告を受けた父親は至って冷静であった。一先ず次女たちが未だに食事を続ける現場から少し離れた場所へとニクシーを連れて行って一言・・・。
メラルーク「ピュー、今更何言ってんだよ。あの2人(いや今回は3人か)が釜の飯を平らげちまうだなんて日常茶飯事じゃねぇか、「まずい」と思うのはコンロの隣を見てからにしてくれないか?あ、今のはくれぐれもメラ達には内緒な。」
ピューアがメラルークの指差した方向を見てみるとその先には一回り大きな炊飯窯が鎮座していた、よく見ればもう既に点火されている。
メラルーク「こういう事もあろうかといつも別々に作ってんだよ、ただメラ達にあの釜の存在を知られる訳にいかないから1つしか無い様に見せかけていたんだ。騙すような事して申し訳ない、この通りだ。」
深々と頭を下げるマーマンの目の前でニクシーは開いた口が塞がらない様子でいた、どちらかと言えば「怒っている」というよりそれを通り越して「呆れてしまっている」という方が正しいのかもしれない。
ピューア「そりゃあメラ達にお腹いっぱい食べさせてあげたいって言うお父さんなりの気遣いなんだとは思うんだけどね・・・、私嫌な予感がするのよ・・・。」
メラルーク「「嫌な予感」って・・・?」
ピューア「多分すぐ分かるはずよ、それとメラ達を甘やかし過ぎちゃまずいと思わないの?」
メラルーク「育ち盛りな上に今でも陸上部とかで活躍しているんだから放ってはおけないよ、それに「お父さんの炊き込みご飯のお陰で1日頑張れる」って言ってくれているんだからその気持ちに応えないとね。」
ピューアは頭を抱えていた、どう考えても兎に角お腹いっぱい食べたい女子高生達が上手く言葉を並べておだてに載せている様にしか思えなかったのだ。
メラルーク「なぁ・・・、それより「嫌な予感」って何なんだよ。気になって仕方が無いじゃないか。」
ピューア「まだ分からないの?じゃあさっき内緒にしていた方の炊飯窯を見てみたら?」
呆れかえる長女の言う通りにした父親は驚愕の光景を目にしてしまった、これは俺も予想していたのだが新しい炊き込みご飯が先程炊けた事を『察知』した好美の先導でメラ達が秘密の釜に手を付け始めていたのだ。
メラルーク「ちょっと待ってくれ・・・!!それだけはちょっと・・・!!」
焦るマーマンの横で至って冷静となっていたニクシーは再びあの一言を、それも少し強めに・・・。
ピューア「あんた達!!本当に遅刻しても知らないよ!!私、この後予定有るので送れないからね!!」
長女の叱責を聞いても次女達はまだ食べていた、2人には強力な味方がいたからだ。
メラ「大丈夫だよ、私達にはこの大家さん(好美)がいるもん。」
好美「え?私あと2時間はここにいるつもりだけど?」
ピューア「もう好美ったら仕方が無いんだから・・・、ほらあんた達に『付与』してあげるから自分達で『瞬間移動』したら?」
メラルーク「いやピュー、「仕方が無い」で2時間も居座られたら困るんだが・・・。」
ごもっとも・・・




