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豚肉の確保は大丈夫だが・・・。
-370 事情-
昼食をとりながらケデールと豚肉の売買契約交わしてから数十分経った頃、これから出す料理の監修をお願いしたお店が従業員の実家だった事を知ったシューゴは「より一層監修をお願いしやすい」と踏んだので屋台を営業するついでにバルファイ王国にある新店へと立ち寄りピューアを呼び出そうとしていた。
各々の家庭には各々の事情があるはずなのだが1号車の店主の心中には「父親は息子に厳しく娘に甘い」というイメージが強く根付いていた様だ、個人的な考えだけで物事を進めるのは良くないと思うのだが・・・。
シューゴ「ピューアさん、お久しぶりです。」
ピューア「あらまぁ!!お久しぶり・・・、と言っても何か変な感覚ですね。」
こうやって2人が顔を合わせるのは確かに久々ではあるが、『念話』でちょこちょこ話してはいるので「久しぶり」という言葉が正解なのかどうかが分からないでいる。
ピューア「珍しいじゃないですか、今日はどうされました?」
シューゴ「ちょっとお2人・・・、と言うよりピューアさんに御報告があるんです。」
ピューア「「私達2人に報告」ですか、じゃあイャンを呼んで来た方が良いですね。」
シューゴ「いえいえ、皆さんお忙しいでしょうからイャンダさんには後で改めてご報告させて頂きます。」
ピューア「そうですか・・・、そう言えば先程「と言うより私に報告」って言っていましたもんね。どうしてイャンじゃなくて私になんです?」
シューゴ「実は折り入ってピューアさんにお願いがあるんですよ、これから提供する料理についてなんですが。」
「豚肉料理」と「朝食」というキーワードだけは聞いていた上級人魚、「朝の時間帯に提供する豚肉料理と言えば・・・」と豚肉や野菜の優しい風味に溢れるある料理を思い浮かべた。
ピューア「朝に出すんですよね、という事は「豚汁」とかですか?」
この3国において、特にこのバルファイ王国では夜から翌朝の時間帯と日中における気温差がかなり激しいのでピューアは出汁香る温かな豚汁を提供するお店があるとありとあらゆるお客さんに喜ばれるのではないかと踏んだらしい。
シューゴ「良いですね・・・、それも良いアイデアとして取り入れる事を検討してみましょう。ただ実はね・・・、今日お伺いした理由は別の料理なんです。」
ピューア「「別の料理」・・・、ですか?」
実は「ビル下店」でも結構な種類の豚肉料理を提供していたというのにそれ以上に何を求めるのだろうかと密かに頭を悩ませていたピューア、ただその傍らで以前からぼんやりとだが「嫌な予感」がしていたとの事。
シューゴ「そうなんです、実は先日小耳に挟んだ事なんですがピューアさんのご実家がトンカツ屋さんなんですってね。」
ピューア「確かに・・・、そうです・・・。」
何となくだが、「嫌な予感」が的中しそうなニクシーは少し話の内容を聞く事に抵抗を覚えていた。
シューゴ「まだそこがピューアさんのご実家だという事を知らなかった時なんですが、そのお店にこれから出す予定である料理の監修をお願いしたんです。それでなんですが、宜しければピューアさんにはこれからご実家のトンカツや豚汁の製法を学んできて頂けないかと思いまして。」
事態が「嫌な予感」を通り越してしまった様だ、ピューアは躊躇いの表情を隠しきれていない。
ピューア「私に・・・、ですか・・・?」
シューゴ「はい、大丈夫でしょうか・・・。」
勿論「大丈夫」な訳が無かった、改めて言う事では無いがピューアが父・メラルークの反対を押し切り実家を飛び出して以来2人はずっと仲違いしたままでいるのだ。そんな状態でトンカツや豚汁の製法を学びに行ける訳が無い、「暴徒の鱗 全従業員名簿」にはそこまで記されてはいないのでシューゴが事情を知らないのは当然だった。
一先ずニクシーは以前真希子と1度実家に戻った時の事を思い出して話す事に。
ピューア「実は先日とある事情で帰った時に父にドヤされちゃいまして、多分まだ私が家を飛び出した事を許していないんだと思うんです。」
シューゴ「そうですか・・・、それはお父様にもお話をお伺いする必要がありますね。」
トラブルにならなきゃ良いけど・・・。




