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灯台下暗しってやつか?
-369 貪欲-
ピューアが「暴徒の鱗」に就職してから結構な月日が流れていたのにも関わらず、自分が新店で出す料理の監修をお願いした店がまさか上級人魚の実家だったなんて思いもしなかったシューゴ。「ビル下店」新設の際に行った採用面接の時に履歴書を見て名前を憶えていたはずだと思われるが、先程も言った様に結構な月日が流れているので仕方が無いのかもしれない。
シューゴ(念話)「待てよ、どうして「C’ s キッチン」がピューちゃんの実家だって分かるんだよ。」
ケデール(念話)「自分で言ってたのに分からないのか?」
数秒程しか経過していないはずなのに自分の発言をすっかり忘れてしまっているシューゴは『アイテムボックス』から「暴徒の鱗 全従業員名簿」を取り出した、そこには面接の際に確認したギルドカードと同様の情報が記されていた(勿論情報漏洩防止の為に社外秘な上に持っているのはシューゴだけである)。
シューゴ(念話)「ピューちゃんね・・・、あった。」
そこにははっきりと「ピューア・チェルド 種族:上級人魚 出身地:ダンラルタ王国」と記されていた(これ以上書いてしまうと情報漏洩で怒られてしまうのでやめておこう)、そういう物を持っているならちゃんと見ておこうよとつい思ってしまうがこれが貝塚財閥(結愛)なら騒動となってしまう。
シューゴ(念話)「本当だ、ファミリーネームが「チェルド」だね。だからかな・・・、今回の件を快諾してくれたのは。」
「それは違う」と否定するべきなのかもしれない、俺個人的には「暴徒の鱗」自体がこの世界において頭角を現して来たからだと思ってしまうのだが経営者からの目線から言えばやはり謙虚になりたい(謙遜するべき)と感じてしまったのだろう。
ケデール(念話)「それにしてもチェルドさんの所に監修をお願いして何を出すつもりなんだ?まさかと思うがあの店の有名な豚カツをそのまま出す訳じゃ無いだろう?」
シューゴ(念話)「流石にな、そんな事をしてしまうと「コラボ」や「監修」の域を越えて「暖簾分け」にまでなりかねないからな。俺だって気が引けるよ。」
現時点でも「名物」と言える料理がある「暴徒の鱗」が提供したがる新たな料理とは何なのだろうか、正直あるかどうかも俺には分からない。
ケデール(念話)「じゃあ何なんだよ、お前はまだ欲張るつもりか?」
シューゴ(念話)「あのな、人間の欲ってのは無限大なんだぞ?」
「人間の3大欲求」にそう言った物が存在するかどうかも分からないのだが、今は暴徒の話を聞いてみる以外の方法が見当たらない。
ケデール(念話)「「探求心」ってやつか?俺も見習わなきゃと思うがどうするつもりなんだ、早く教えろよ。」
はやる気持ちを抑えているのか、それともそろそろ牛舎に牛達を戻さないといけないのか、シューゴの思惑を早く聞いてスッキリとした気持ちになりたいケデール。
シューゴ(念話)「実はな、この前朝早く市場へと向かった帰りに立ち寄ったチェーンの豚カツやで食べた料理が美味かったんだよ。」
ケデール(念話)「朝早くから?そんな店があるのかよ。」
最近好美の影響で24時間営業の店が増加して来たためか、この世界にも終日開店しているトンカツ屋が出来た様だ。貝塚財閥のあるバルファイ王国を中心に夜遅くに仕事を終えたサラリーマンや夜勤を終えた夜間作業員が気軽に立ち寄れる場所になっているらしい、因みに俺も最近のマイブームとしてちょこちょこ行っている(店名は想像にお任せします)。
シューゴ(念話)「そうなんだよ、そこにあった豚の角煮を揚げたカツが美味くてさ!!うちの叉焼で作ったらどうなるんだろうなって思って考えてんだよ!!」
ケデール(念話)「それはいい考えかもだが、どうしてわざわざ「C’ s キッチン」に?」
シューゴ(念話)「やっぱりやるならそれなりに極めたいと思うじゃないか、世の中「餅は餅屋」って言うだろ?トンカツの事はトンカツ屋に聞かなきゃね。」
たとえ中身となる豚肉だけが美味くてもその料理は完成しない、シューゴは衣を含めて「全て完璧な料理」を貪欲に追い求めていたのだ。
ケデール(念話)「お前って奴は・・・、探求心の塊だな。欲張りと言うか・・・。」
シューゴ(念話)「褒めなくても良いって、照れるじゃねぇか。」
褒めてねぇよ!!




