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どんな店にする予定なのかね・・・
-368 新店のプラン-
シューゴ直々の『念話』に応えて新店に出す豚肉の受注を請け負ったケデール、友の熱意にやられたというと響きが悪いかも知れないが期待に応えることが出来るように努力しようと誓ったのは良いものの何処か引っ掛かる事があった。
ケデール(念話)「シューゴ、ちょっと良いか?」
シューゴ(念話)「何だよ、改まった様に。」
誰だってこういった入りから話を変えられてしまった場合が苦手だったりする、シューゴは「何の用なんだろう」と少しオドオドとしながら用事を伺う事に。
ケデール(念話)「ただ気になっただけなんだけどさ、シューゴの所で「豚肉」と言えばご自慢の叉焼があるのにそれ以外に何を出そうってんだよ。まさかと思うがまた好美ちゃんの店みたいにするつもりか?」
今更言う事でも無いのだが、好美がオーナーとなっている「ビル下店」は本人たっての希望で拉麵屋と中華居酒屋を兼ねた店舗となっている。転生前に世話になった「松龍」の味を大切に守りたいという気持ちが強かったが故のリクエストがフルに活かされた店舗である、だがそれが故に「暴徒の鱗」内でメニュー数が1番多いのも事実なので開店当初は肉の受注を請け負っていたケデールの店もやはり初日から大騒動だった。商売人としてこんな事を言ってはいけないのは分かるのだが、「もうあんな目に合うのは御免だ」と言う気持ちが未だに残っていたのだ。
シューゴ(念話)「流石にあんな感じの店は好美ちゃん以外の従業員には荷が重い気がするよ、あの店だから出来る事だから「独自性を持たせる」という意味でも「ビル下店」の真似は決してしない様にしようと思ってね。」
屋台を含めて数々の店舗が各々の「アイデンティティ」を持っている理由はそこだったのかもしれない、「この店にしか出来ない事をやろう」という想いを大切にしたいという信念を感じる。
ケデール(念話)「じゃあどうするつもりなんだよ、叉焼や「ビル下店」で出している中華料理以外に豚肉料理なんてお前の所じゃ出していなかっただろう?」
シューゴ(念話)「それがさ・・・、1つだけプランがあるんだよ。」
ケデール(念話)「プラン・・・?また面白い事を考えているんだな?」
シューゴ(念話)「そうなんだよ、実はさ・・・。」
ケデール(念話)「待て待て待て・・・!!それって俺が聞いても良い事なのか?」
普通まだ開店してもいない新店のコンセプト等は開店直前まで「社外秘」として口外すべき事では無いと思われるが大丈夫なのだろうか、いくら気の合う友人同士だからって流石にまずい気がするが・・・。
シューゴ(念話)「ああ・・・、「聞いても良い事」というより「是非聞いておいてほしい事」だからな。」
ケデール(念話)「俺にか?何で?」
いくら何でも意味が分からない、ケデール心の中が「?」で満たされていた。
シューゴ(念話)「そうだな・・・、友人としてというより「肉のプロ」としてって言った方が良いかも知れないな。」
ケデール(念話)「はぁ・・・。」
うん、やはり意味不明だ。これは無意識に興味がそそられてしまう。
シューゴ(念話)「そうだな・・・、何処から話せば良いのかな・・・。デール、この前TVでやってた「C’ s キッチン」っていう店を知っているか?」
ケデール(念話)「ダンラルタ王国にある魚人族のトンカツ屋だろ?俺も気になっていたんだよな、でも確か・・・。」
ついつい黙り込んでしまうケデール、何か重要な事を忘れたままでいるのだろうか。
シューゴ(念話)「ん?何だよ、気になるじゃねぇか・・・。」
ケデール(念話)「別に、それでそのトンカツ屋がどうしたってんだよ。」
シューゴ(念話)「そうそう、ついこの前そこの豚カツを食ってめっちゃ美味かったから無理も承知で新店の料理の監修をお願いしたんだ。えっと・・・、ここに名刺が・・・。あったあった、「メラルーク・マリュー・チェルド」さんっていうマーマンの方だそうだ。ただ何処かで聞いた事がある様な気がするんだが・・・、デールは覚えていないか?」
ケデール(念話)「思い出した!!チェルドさんだ!!」
シューゴ(念話)「な、何だよ・・・!!耳が「キーン」ってなったじゃねぇか!!」
ケデール(念話)「お前知らねぇのか?!その店、ピューアちゃん達の実家だぞ?!」
嫌な予感が・・・




