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どうして豚肉なの?
-364 お客さんの為を思う-
兄弟は「豚肉を中心とした料理を提供する」事と「朝食メニューを提供する」事に関しては納得していた、ただイマイチ理解に苦しむ事が1点。そう、どうして旅館の一角に出すお店で提供する料理の食材として「豚肉」に拘るのだろうかという事である。やはり現場の従業員として納得のいく理由を聞いておきたいと思った2人は出来たばかりの店内に着席してお茶を飲みつつ、ダンラルタ王国にある山の中腹辺りにある駐車場の隅で次の販売ポイントへと向かう為に屋台の片づけを行っていた1号車の主人に『念話』を飛ばした。
イャンダ(念話)「お疲れ様です、シューゴさん今お時間宜しいでしょうか。」
たとえ『念話』を使用しているとしてもそこはビジネスの場、電話と同様の形式で丁寧な言葉遣いを心がけるイャンダ。
シューゴ(念話)「お疲れ様です、私で宜しければ大丈夫ですよ。如何なされました?」
会社全体を回す代表取締役になったとしても必ずと言って良いほど相手を敬う気持ちを忘れないバーサーカー、こういった所は俺も見習わなきゃなとつくづく思ってしまう。
イャンダ(念話)「いや・・・、大した事では無いんですがどうして温泉旅館の一角に出すお店で提供するのが豚肉料理なのかなと思いまして・・・。」
ベルディ(念話)「そうなんです、実は私も疑問に思ってました。」
弟は店長として、そして兄は旅館の主人兼店のオーナーとしてちゃんと知っておきたかったとの事だ。
シューゴ(念話)「そうですね・・・、簡単に言えば「栄養素とその効果」ですかね・・・。」
全くもって意味が分からない兄弟、しかし店を開店させた後だと多忙さが故にこうやって時間を作って質問する事が出来ない為今のうちにしっかりと聞いておこうと思った様だ。
ベルディ(念話)「「栄養素と」・・・。」
イャンダ(念話)「「その効果」・・・、ですか・・・。」
帰って来た答えが端的すぎて理解に苦しんでいる2人、これはしっかりと聞いておく必要がありそうだ。
シューゴ(念話)「そうなんです、豚肉に「ビタミンB1」が豊富に含まれているので疲労回復に良いんですよ。それに旅館と言えば各々の旅で疲れたお客さんの疲れを癒すばしょじゃないですか、少しでもお客さんのお役に立てる店になれたらと試験的に始めようと思ったんです。」
シューゴの商売に対する熱意とお客さんへの思いやりに感動した兄弟、可能な限り協力したいと思った2人は自分達の務めを果たそうと心に決めたそうだ。それが故にずっと無言の状態が続いていた様で・・・。
シューゴ(念話)「あの・・・、どうかされましたか?」
イャンダ(念話)「あ・・・、すみません。自分達もシューゴさんに可能な限り協力出来たらなと思ってたんです。」
シューゴ(念話)「嬉しいです、人事異動を出した時にちゃんと説明出来て無くて申し訳ありません。」
ベルディ(念話)「謝らないで下さいよ、それより発注先や配送ルートはどうされるご予定なんですか?」
いくら協力するにしても材料をどの様に仕入れれば良いのか分からない、「豚肉料理を提供する理由」もそうだがそこも必ず聞いておきたい重要事項である。
シューゴ(念話)「そうですね・・・、現時点では叉焼用のお肉と同じ所にお願いしようと思っているんですがいつも御贔屓になさっているお店とか他にあったりはしますか?」
イャンダ(念話)「「贔屓にしているお店」ですか・・・。」
イャンダはふと兄がお茶を飲むのに使っている湯呑に目をやり少し前の事を思い出した。
イャンダ(念話)「確かお茶の葉を混ぜた餌で家畜を育てている肉屋があった様な・・・。」
シューゴ(念話)「ああ・・・、ケデールさんと守君のいるお店ですよね。」
ケデールの経営する肉屋はここ数年が経つ内にこの3国中ですっかり有名となっていた。
ベルディ(念話)「俺も知ってるけど、何で守君が?」
ベルディは宿泊客として旅館に来た時の守しか知らないのでそう反応しても仕方が無い。
久々に「守」って言葉が出てきた様な・・・




