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着々と作業が進む中・・・
-359 食い物の誘惑と恨み-
引越しの作業を行う中でイャンダにはどうしても聞いておきたい事があった、これから生活するこの旅館(実家)の館内に新設されたお店という事は主人である兄・ベルディがオーナーという事になる(という事は分からない事があれば兄に尋ねれば良いはずだ)。
イャンダ(念話)「兄貴・・・、全然帰って来ないけど何処にいるんだ?」
因みに兄は未だに女性達とお茶を楽しんでいる、正直言って今弟に所在地を伝えるのは俺的には良くないと思ってしまうのだが(3人が話している話題が話題なだけに)。
ベルディ(念話)「悪い悪い、妻が淹れたお茶が美味かったもんでつい時間を忘れてしまっていたんだよ。(ボリボリ)」
イャンダ(念話)「まぁどちらかと言うと俺は手伝って貰っている方の立場だし、気持ちは分からんでも無いから何も言えないけどさ。」
ベルディ(念話)「「手伝わない」とは言っていないだろ、すぐ戻るからちょっと待っててくれ。(ボリボリ)」
仕事上での異動と言っても恋人と引っ越して来たのはイャンダの方だ、決して我儘を言える立場では無い。どちらかと言うと2人の為にわざわざ部屋を空けておいてくれた兄に感謝しなくてはならないのではないだろうか、ただ『念話』で話しているはずなのに何処か違和感がある様な無い様な。
イャンダ(念話)「兄貴・・・、気の所為なら良いんだけどさっきから「ボリボリ」って音が聞こえるんだが・・・?」
ベルディ(念話)「聞こえてたか?すまんすまん、実はピューちゃんが持って来てくれたお徳用の割れ煎餅が美味くて止まらなくてさ。」
まだ食ってたのか・・・、どんだけたっぷり入ってんだよ。いやそれは良いんだ、何故か弟の様子がおかしいんだが?
イャンダ(念話)「まさか・・・。」
ベルディ(念話)「お、おい・・・。どうかしたのか?(ボリボリ)」
『念話』でも伝わる位に体を小刻みに震わせるイャンダ、それから数分の間無言の空間が続いていたという(煎餅を食う音を除いて)。
ベルディ(念話)「おーい、大丈夫か?(ボリボリ)」
イャンダ(念話)「兄貴、それって色んな味の割れた煎餅が大きな袋にたっぷり入っているやつの事か?」
ベルディ(念話)「良く知っているな、美味しいからついつい手が出ちゃうんだよな。こんなの初めてだ、ピューちゃんって買い物上手なんだ・・・。(ボリボリ)」
イャンダ(念話)「知っているの何も俺のだ、それとどんだけ食うんだよ!!」
ベルディ(念話)「へ・・・?(ボリボリ)」
脳内に木魚と鉦の音が響いたベルディ、因みに口内にはまだ煎餅が。
ベルディ(念話)「イャン君・・・、あのさ・・・、今何と?(ボリボリ)」
イャンダ(念話)「今言った通りだよ、引っ越しの作業が終わったら皆でお茶でも飲みながら食べようと思ってピューアにお金を渡して買って来る様頼んでおいたの!!あれ老舗の煎餅屋が出しているやつで結構人気の商品だからなかなか手に入らなくて・・・、食べるの楽しみにしていたのに!!と言うかまだ食ってんのかよ!!」
割れ煎餅を食べ逃したイャンダが先程以上の速さで小刻みに震えているのを何故か『察知』したピューア、もしかしてこれは恋人への気持ちが強いからが故なのだろうか。
ピューア(念話)「イャン、勘違いよ!!(ボリボリ)」
へ・・・?どゆ事・・・?と言うかピューアもまだ食ってんの?
ピューア(念話)「貴方のお金で買った割れ煎餅は私の『アイテムボックス』で預かっているから安心して!!ただ言うのを忘れていただけなの!!(ボリボリ)」
イャンダ(念話)「じゃ・・・、じゃあ兄貴と食べていたのって?」
ピューア(念話)「美味しそうだったから私も一緒のを買ったのよ、紛らわしい事をしてごめんなさい!!(ボリボリ)」
えっと・・・、という事は・・・(と言うか食うか謝るかどっちかにしろ)?
ベルディ(念話)「イャン、俺怒られ損やないかい!!(ボリボリ)」
イャンダ(念話)「ごめんって・・・、この通り謝ってるやんか!!」
ピューア(念話)「いやあんたら、何で急に関西弁になるねん・・・。(ボリボリ)」
あんたもやろうが!!




