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早くしろって
-354 兄弟の秘密③-
頑なに押入れの引き戸を開ける事を拒否し続ける兄にイラつきだした弟、それほど弟に見られたくない物が入っているのだろうか。ただ「見ちゃ駄目だぞ」と言われると逆に見たくなってしまうのが人間という物、正直傍らで見ているだけの俺も「早くしやがれ」とクレームを入れたくなってしまいそうになっている。
イャンダ「兄貴、「別に何も」って言うなら開けても平気だろ?それとも俺に見られたくない物でも入っているのか?」
ベルディ「あのな・・・、誰にでも知られたくない秘密って物があるだろうが。こう言った事はな、そっとしておくのが1番なんだぞ?世の中に「知らぬが仏」や「触らぬ神に祟りなし」って言葉がある位なんだから「見なかった、ここには何も無い」って事にしておいてくれよ。」
いやお兄さん、その態度だとやはり「何か秘密を隠している」のが明らかだぞ?兄弟同士、正直になるのが1番だと思うけどな。
イャンダ「ほら、作者だって言っているだろう?諦めて開けろよ。」
おいイャンダ、今のは聞き捨てならんぞ!!「アホ」とは何だ「アホ」とは!!
イャンダ「チィッ・・・、いちいち細かい事で突っかかって来るんじゃねぇよ。そんなんだからいつまで経っても彼女が出来ねぇんだぞ。それより兄貴、そろそろ観念して押入れを開けろっての。」
ベルディ「そこまで言われると俺にだって意地って物があるから開けたくないもんね、絶対開けて堪るか!!」
あらら・・・、このままだと埒が明かないな。イャンダ、俺が許すからやっちまえ。
イャンダ「あのな・・・、お前何様なんだよ。」
え?この世界を創った創造主(作者)様だが?
イャンダ「別に良いか・・・、と言うかお前に言われなくてもやってやろうと思ってたんだよ。」
痺れを切らしたイャンダはベルディを押しのけると無理矢理押入れを開けて中にある物を引っ張り出した、押入れの下段には古びたダンボールが1箱。よく見ると「イャンダ」と書かれていた、イャンダ自身の私物だというのだろうか。不審に思いながら弟はその箱をゆっくりと開けて中身を覗くと唖然となっていた、そして何故か顔を赤くしてその場にしゃがみ込んでしまった。
イャンダ「兄貴・・・!!何でまだ持ってんだよ・・・、これは昔「汚点だからもう捨てる」って言っただろ?」
「汚点」だって?元竜将軍が思わず恥ずかしがる様な汚点とは一体・・・。
ベルディ「いやな、お前の事だからまた「着たくなる」かなと思って残してたんだよ。」
「着たくなる」・・・、という事は衣服という事なのか?
イャンダ「こんな物俺がいつ着たくなると思ったんだよ、魔学校の学祭でこれを無理矢理着せられた夜寝れなかったんだぞ!!」
ベルディ「確か同じクラスの女の子たちが写真を撮りまくっていたよな、流石何でもに合う人気者は違うよな。」
遠い昔を思い出して顔をニヤつかせる兄、そんな兄の表情を見てため息をついた弟はついにダンボール箱から中身を取り出した。
イャンダ「兄貴・・・、俺にまたこれを着せたいだなんてどれだけ悪い趣味を持ってんだ。」
ベルディ「いやいや、懐かしい思い出に浸りたくなる時って誰にでもあるはずだぜ?」
より一層顔をニヤつかせるベルディを横目に改めて箱の中身を眺めるイャンダ、その手には黒い洋服が・・・。
イャンダ「あのな・・・、あの時も言ったと思うが俺はゴスロリなんて嫌だったの!!」
そう、ベルディが隠し持っていたのはイャンダが魔学校時代に無理矢理着せられたゴスロリ衣装だったのだ。その日イャンダの所属していたクラスでは「女装喫茶」を開いていたのだが、前もって決まっていたメンバーと共に何故か女子からの推薦によりイャンダ本人も急遽ゴスロリで参加する事になってしまったとの事だ。何か・・・、可哀想(笑)。
青春だねぇ~・・・。




