353
男だけの秘密の場所とは
-353 兄弟の秘密②-
浴室へと続く出入口から入り込んで来る微かな光のみで照らされた薄暗い階段を降りた兄弟の目の前に2人の身長とほぼ同じ高さの扉が現れた、個人的にこう言った「隠し部屋」に入る時は出入口を閉めると思うので階段側にも小さな電灯を取り付けるべきでは無いだろうかと意見したいが今は兄弟水入らずをゆったりと楽しんで欲しいという気持ちも無くは無かったので心の中に閉じ込めておく事にしようか。
イャンダ「ちょっと聞きたいんだけど、思ったより階段が長かった様な気がするんだがこれって物運ぶの大変じゃねぇの?」
ベルディ「大丈夫だよ、実はお前がお世話になっていた好美ちゃんに「これを持っていると便利ですよ」って『アイテムボックス』を『付与』してもらったんだよ。お陰で持ち運びが楽でね、あの子には感謝しなきゃな。」
「好美」という名前と「感謝」という言葉を聞いたイャンダは背筋が凍る様な気分になっていた、理由はただ1つだ。
イャンダ「兄貴、悪い事は言わないからその言葉は心の中に留めておけ。」
しかしイャンダの忠告は「時すでに遅し」となっていた、「噂をすれば影」という奴だ。
好美(念話)「イャンダ、何で私に感謝する事を口にするのは駄目な訳?」
イャンダ(念話)「こ・・・、好美ちゃん・・・。俺そんな事言ったかな・・・?」
何も無かったかのように惚けるイャンダだが、実家に出来た新店に異動して不安になっていないかと心配してこっそりと『探知』していた好美には全て筒抜けだった様だ。
イャンダ(念話)「好美ちゃん、因みに何処から聞いていたんだよ。」
好美(念話)「えっとね・・・、「ちょっと待てよ兄貴、1部屋しか空いていない訳が無いだろう」って所からかな。」
イャンダ(念話)「結構前からじゃねぇかよ、じゃあ俺の部屋の事も?」
好美(念話)「全部分かってるよ、それよりピューアに対して隠し事をしても良いと思っている訳?」
好美の言い分には一理ある様な気がする、よく考えてみればイャンダより好美の方がピューアとの付き合いが長いのでそれが故の確実な説得力を感じるのは傍らで聞いているだけの俺だけでは無いだろう。
イャンダ(念話)「好美ちゃん・・・、久々に再会した兄弟だけで子供の頃に戻ってゆっくりと過ごしたい時だってあるんだよ。」
ベルディ(念話)「そうだよ、確かに仲違いをしていたのは本当だけど小さかった頃は仲良く遊ぶ子供だったんだから許してよ。」
兄弟の気持ちも分からなくもない、好美は幼少の頃に故郷・徳島の田舎で遊んでいた頃の事を思い出して感慨にふけっていた。
好美(念話)「分かったよ・・・、ピューアには内緒にしておいてあげるから部屋に入ったらどうなの?」
イャンダ(念話)「分かってるって・・・、と言うか好美ちゃんが止めたんだろう?」
好美(念話)「またそんな事を言うんだ、絶対ピューアに話しちゃうもんね!!」
イャンダ(念話)「ごめんって・・・、謝るからこれからの事は内緒にしておいてくれ。」
流石にこういう場合においては好美も「鬼」とはならない、しかし弱みを握られたくない人間に握られてしまったと頭を抱えるばかりのコロニー兄弟は一先ず部屋の中へ。
イャンダ「これは俺と兄貴の・・・、懐かしいな・・・。」
部屋の中にある大きな戸棚には兄弟が昔よく遊んだブリキのおもちゃが並んでいた、イャンダは蘇る思い出に目を輝かせるばかりだった。
ベルディ「そうだろ?折角この家に帰って来たんだから思い出の品に囲まれて過ごすのも良いんじゃないかなって思ってさ、気に入ってくれたみたいで良かったよ。」
イャンダ「気に入ったも何も、この歳になるまで大切に取っておいてくれたんだな。」
良い話を聞かせて貰ったと思った好美はいつの間にか『念話』を切って『探知』で様子を伺うのみにしていた、そんな中でベルディは部屋の端にある引き戸の押し入れの前に立ち1歩も動こうとはしなかった。不自然すぎるのは一目瞭然、正直気になるのだが・・・。
イャンダ「兄貴、何で動こうとしないの?」
ベルディ「い・・・、いや別に何も・・・。」
イャンダ「これからここが俺の部屋になるんだろ、何があるのかちゃんと見せろって。」
何を隠しているんだ




