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平和な1日が流れる・・・
-337 客目線となって-
ネフェテルサ競艇場にて続々とレースが進行していく中、場内にある韓国料理専門の食堂でサムギョプサルを楽しんでいた。そんな中、光が何故か辺りを見廻していたので好美はほんの少し不審に思っていた。
好美(当時)「光さん、さっきからどうされたんですか?お知り合いの方でも来られるんですか?」
決して大きくないこの国において、「光の知り合いは好美とも知り合いである」と言う言葉を否定する事が出来ない気がする。その上好美の同棲相手で光の腹違いの弟も暫く登場してきていないのでそろそろ出て来ても良いのではないかとも思ってしまう、まぁこれに関しては俺の匙加減なのだが。
光(当時)「い・・・、いや・・・。別に誰とも待ち合わせていないよ、それにこの国で待ち合わせするなら他にも良い場所があるじゃない。」
確かに市街地の真ん中にある噴水の前や「お風呂山」、それに王城やその隣の教会など待ち合わせに使えるスポットなどはいろいろあるはずだ。そんな中でこんな競艇場内にある食堂で待ち合わせる住民なんているのだろうか、いややはりここは異世界だからが故に十分にあり得る話なのかも知れない。
好美(当時)「何言ってんの、私ここで遊ぶ時は絶対この食堂の前で待ち合わせるもん。」
そうなんすか・・・、何かすんません・・・。ただこのままでは一向に話が進みそうに無いのでお許し下さい。
好美(当時)「もう・・・、それでどうされたんです?誰かとの待ち合わせじゃ無いんだったら何か探し物ですか?」
美味いサムギョプサルで白飯やビールがどんどん進んで行く中、光は1人物足りなさを感じていた様だ。おいおい、それ以上の贅沢なんてあるのかよ。
光(当時)「私ね、このお肉をキムチと一緒にサンチュで巻きたいなと思ってたのよ。」
韓国料理を提供する店でキムチが置かれていない事が果たしてあっただろうか、いややはりこういった事も「異世界が故に・・・」と言える可能性が無くも無い。
好美(当時)「それ私もしたいです。あの・・・、これじゃ無かったですか?」
卓上で薄い冷却魔法の膜の様な物で包まれた茶色の壺を指差した後にその蓋を開ける好美、中には「当然」と言った様によく漬かっているキムチがたっぷりと入っていた。光は自らの興奮を抑えつつ小皿2枚に取り分けて好美と1口、すると・・・。
2人(当時)「これこれ・・・、やっぱり美味しい!!」
そこに本人の今までの人生で1番では無かろうかと推測される程の笑顔を浮かべた女将が通りかかった、何となく理由が想像できるが念の為に聞いてみよう。
女将「どうだい、口に合ったかい?」
光(当時)「美味しいです、これって持ち帰りって出来ますか?」
女将「一応あそこにあるけど、良かったら見てみるかい?」
すると女将は先程好美がマークシートを詰まらせかけていた券売機の隣にある冷蔵ケースを指差した、光がそっと近づき覗き込んで見ると数種類の野菜で出来たキムチがズラリと並んでいた。
光(当時)「どれも美味しそうですね、でも結構在庫があるっぽい。」
女将「一応ここは競艇場だからね、食べた後すぐ帰る人自体多く無いからあんまり売れ行きが良くなくてね・・・。」
好美(当時)「こんなに美味しいのにどうしてだろう・・・。」
好美はケースの中を見廻すとある事に気付いた。
好美(当時)「結構いいお値段するんですね。」
女将「まぁね・・・、一応野菜から作っているし全部手作りだから手間と時間がかかっているのさ。一緒に作っている龍族の皆の事を考えたらそんな値段になっちゃってね。」
女将の話を聞いて何かを思いついたのか、好美の目が先程以上に輝いている様な気が・・・。
好美(当時)「女将さん、これ全部頂戴!!」
食えんのけ?!




