331
混沌龍の感覚って・・・。
-331 一体どっちなの?-
施設長が『瞬間移動』で仕事へと戻った後、4人は再びキャベツの収穫へと戻った。バハラは「ただの家庭菜園」だと卑下していたが何処からどう見ても「大きな農園」と呼べる位の広大な畑が広がっている、バルファイ王国までとは行かないがこの世界特有の気温の高さが故に収穫を続ける転生者達の額には汗が滲み出ていた。
美麗「バハラさん・・・、今日ってこれ全部採るの?」
バハラ「いや・・・、私個人にはそんな予定は無いんだ。元々好美ちゃんがここに来たいって言い出したから来ただけだし、2~3玉程採れば店に戻るつもりだったんだけどね・・・。」
そう言いながら混沌龍は好美の方へと目線をやった、拉麵屋のオーナーは収穫したキャベツで一杯にした籠を大量に積んでいた。まさかと思うが・・・、違うよな・・・?
バハラ「好美ちゃん・・・、あんたそれ全部店で使うつもりかい?」
好美「当たり前じゃん、店で試食品を出してバハラさんの野菜の味を知って貰わないと。」
バハラや俺の予感が当たってしまった様だ、しかしいち経営者の作戦としては良い物では無いだろうか(少なくとも俺はそう思う)。
好美「素材本来の味を知ってもらうために玉ねぎはシンプルなサラダで出そうと思ってんの、キャベツは居酒屋でよく出される刻みキャベツが良いんじゃないかな。」
確かにそうだ、特に焼き肉屋で出て来る刻みキャベツってどうしてあんなに美味く感じてしまうのかが不思議で仕方が無い位だ。その上水晒しにした玉ねぎと鰹節で作る和風サラダなんて堪らなく美味い、俺も久々に食いたくなって来たな・・・。
バハラ「私は嬉しいけど良いのかい、本来は拉麵屋なんだろ?」
好美「大丈夫だよ、うちの店って拉麺目的のお客さんより私みたいな酒好きでそれを目的にする人だっているもん。寧ろ後者の方が多いんじゃないかな・・・、多分。」
おいおい「多分」って本当にそれで良いのか?それに「寧ろ酒目的の客の方が多い」って拉麵屋としてどうなんだよ!!
結愛「好美・・・、拉麵屋って酒を吞んだ後の〆で食う事が多くねえか?お前の店って結局拉麵屋なのか居酒屋なのかどっちなんだよ・・・。」
好美「どっちでも良いじゃん、街の真ん中で気軽に呑める店があるだけで私は嬉しいもん。酒から〆の拉麺まで1件のお店で済むなんて最高じゃん。」
特にへべれけに酔った人にとったら呑み屋から拉麵屋まで移動するのが一大事になってしまう事もある、でも酔い過ぎたら流石に拉麵屋なんて行かない(いや行けない)か・・・。
美麗「私は好美の店好きだよ、コンセプトも料理も悪く無いじゃん。」
美麗、お前の場合別の理由があるからじゃないのか?
好美「よく考えれば「松龍」をヒントに造った店って言っても過言じゃないから美麗は通いやすいんじゃないかな、正直龍さんや女将さんに感謝しないとね。」
美麗「ねぇ好美・・・、私も「松戸」なんだけどその内に入らないの?」
好美「勿論美麗も入ってるよ、でも元の世界にいる2人と違って美麗はこっちにいるから別の形で感謝を表せるじゃない。」
こっちの世界だから「出来る事」は沢山ある、ただ「出来ない事」もない訳では無いので今は出来る限りの事をしていこうと考えている好美。何となくだけど・・・、良い話じゃねぇか。
美麗「じゃあ今度奢って貰わないとね、バハラさんの引っ越しは好美が「値切れ」って言うから格安でやったもんね。」
結愛「好美・・・、社長として一応言っておくが貝塚運送に「友達価格」は設定してねぇんだぞ?」
好美「別に良いじゃん、私だって結愛の就労支援に協力しているしマンションの家賃を安くしているんだから。」
結愛「そこまで言われちまうとな・・・、否定が出来ねぇのが悔しいが仕方ねぇか。ただ今回だけだぞ、俺だって経営者だからそれなりに経常利益は欲しいからな。」
好美「分かってるよ、でもこの前のツケはちゃんと払ってもらうからね。」
結愛「げぇっ・・・、覚えていやがったか・・・。」
実は先日、仕事に追われイラついていた結愛は好美の店でヤケ酒を敢行していた。後で分かった事だがその次の日用に仕入れていたビールまで飲み干してしまったそうで・・・。
好美「私が教えて欲しい位だよ、どうやったら1人で28万9800円分も呑むの?」
え?!




