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一応ここ・・・、結愛のデスクなんだが・・・
-330 託児所の存在理由-
知らぬ間にすっかり託児所と化してしまった社長室を見て深くため息を吐く結愛、ただ壁紙等を本格的に変えた訳ではなくベビーベッドを数台持ち込んで作った簡易的な物だったので致し方なく承認する事に(と言うかもう既に行動を起こしてしまっているので時すでに遅しと言うべきだろうか)。
結愛「あのな・・・、別に構わねぇんだけどせめて俺に一言言ってくれないかな。」
ヒドゥラ「別に良いじゃ無いの、あんたここには偶にしか帰って来ないんだから。」
秘書長が言っている事は正論だった、普段は支社・営業先回りや今日みたいに現場の作業を手伝っている事が多いので正直殆どこの部屋で働いている事は少ない(ただハッキリ言ってしまえば今日はほぼ遊びなのだが)。
結愛「それを言われてしまうと否定が出来ねぇな、ただ言い出しっぺは誰なんだよ。」
何となく嫌な予感がしたが念の為に確認する全身ジャージ姿の代表取締役。
女性「私に決まっているだろ、聞く程の事じゃ無いはずだよ?」
結愛「やっぱりか・・・、相変わらずおばちゃんの行動力には敵わないな・・・。」
結愛はもう笑う事しか出来なかった、本人が予想した通りそこにいたのはダンラルタ王国にある貝塚財閥魔獣保護養育施設所長でアーク・ワイズマンの貝塚美玖であった。本社の社長である結愛でも流石に叔母には頭が上がらない、それが故に諦めの気持ちでいっぱいだった。
美玖「そんな事より結愛、あんたも抱いてみたらどうだい?案外可愛いもんだよ?」
託児所(もうこう呼んでも良いか)と言えどやはりここは異世界、ベビーベッドには生まれて間もない鳥獣人族や龍の赤ちゃんがすやすやと眠っていた。
結愛「そうしたいのは山々なんだが俺今から土いじりしないとだから行くわ、部屋は暫く使ってくれて良いからまた抱かせてくれや。」
社長はそう言うとバハラの家庭菜園へと『瞬間移動』で戻った、戻った先ではキャベツの収穫が始まろうとしていた。
好美「お帰り、「すぐ戻る」って言ってたのに時間かかったみたいだね。」
3人の目の前で頭を悩ませる様子の結愛、大体想像は付くのだが・・・。
美麗「あれ・・・、何かあった?」
結愛「いや実は・・・、かくかくしかじかでさ。」
だから前にも言ったかも知れないけど絶対伝わってると思えねぇんだが・・・。
バハラ「え?結愛ちゃんの社長室がいつの間にか託児所になってたって?」
またこの件かよ・・・、もう何も言わないでおこう・・・。
美麗「託児所って事は赤ちゃんがいるの?」
結愛「そうなんだ、おばちゃんの施設で生まれた獣人族や鳥獣人族の赤ちゃんを預かっているらしいんだよ。秘書長もそうだが、おばちゃんには困ったもんだよ。」
転生者達の会話を『察知』したのか、噂の叔母から『念話』が。
美玖(念話)「何だい、あんたも目を輝かせていた癖に言ってくれるじゃないか。」
結愛(念話)「そりゃあ俺だって社長である前に1人の女だぜ、「自分にも光明との子供が出来たら・・・」って想像しちゃうくらい良いじゃんかよ。」
美玖(念話)「だったらやっぱり素直に抱けば良かったんじゃないのかい?」
赤ちゃん達がすやすやと眠る光景をただじっと見つめるだけでは無く、実際に抱いてみる事で「子供に対する憧れ」がより一層膨らむのではないかと考えた美玖。
結愛(念話)「でもよ・・・、赤ちゃんなんてどうやって抱けば良いか分かる訳無いだろ?」
「自分がどうやって抱かれていたか思い出せば良い」と言いたくなるが、この世界で再会するまで母・莉子の顔すら覚えていなかったので結愛がそう言うのも無理は無い。
美玖(念話)「そうだったね・・・、悪かったよ・・・。」
あれ、裏でもあるのけ?




